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【企業研究者】構想力の原点は妄想力|まだ仮説にならないアイデアを価値に変える考え方|面白さを会社の価値に変える構想力III| 企業研究者の価値創出スキル#4

企業研究者は、よくこう言われます。

「研究テーマを考えなさい」
「仮説を立てなさい」
「会社の価値につながる研究をしなさい」

もちろん、その通りです。しかし、研究テーマや研究仮説が、いきなりきれいに出てくるわけではありません。

「こういう商品があったら面白いのではないか」
「こういう技術があれば、生産がもっと効率的になるのではないか」

このような、まだ根拠も仮説も固まらないアイデアがあります。
私は、この段階の力を「妄想力」と考えています。

【企業研究者】研究テーマの決め方|面白さを会社の価値に変える構想力| 企業研究者の価値創出スキル#2
では研究テーマの決め方、
【企業研究者】研究仮説の立て方|面白さを会社の価値に変える構想力II| 企業研究者の価値創出スキル#3
では研究仮説の立て方について書きました。
ただ、実際にはそのさらに手前に、「まだ形になっていない妄想」があります。

今回は、企業研究者に必要な構想力の原点として、妄想力について考えます。

目次

構想力の原点は、妄想力である

結論から言えば、構想力の原点は妄想力です。
なぜなら、構想は最初から完成された形で生まれるものではないからです。

研究テーマや研究仮説という言葉を使うと、最初から論理的で、根拠があり、上司にも説明できるものを考えなければいけないように感じます。

しかし、出発点はもっと雑でよいと思います。

「こんな商品があったらいいな」
「この工程、もっと楽にできないかな」
「この品質トラブルを根本からなくせたら強いな」

このくらいのアイデアレベルの発想が、構想の入口になります。

妄想は、構想より前の段階です。
構想は、妄想に顧客課題、技術的な可能性、事業価値、検証の道筋が加わったものです。

つまり、妄想がなければ、構想も研究テーマも生まれません。

妄想力とは、まだ仮説にならないアイデアを自由に考える力

妄想力とは、無責任な思いつきを言い切る力ではありません。

まだ研究テーマにも、研究仮説にもなっていない段階で、未来の価値を自由に想像する力です。

「こういう商品があったらいい」
「こういう技術があれば生産効率が上がる」
「こういう品質課題を解決できれば会社の強みになる」

こうした発想です。

この段階で、すぐに「本当にできるのか」「費用はどうするのか」「上司に通るのか」と考えすぎると、アイデアは一気に小さくなります。

もちろん、企業研究では実現性も費用対効果も重要です。
ただし、それは後で考えることです。

妄想段階では、まず広げる。
実現したら何が変わるのかを考える。
その可能性を楽しむ。
これが妄想力です。

妄想の原点は、実験室の中だけではない

妄想の原点は、実験室の中だけではありません。

企業研究者は、自分の専門分野を深める必要があります。
論文を読み、実験し、データを見て、技術を磨く。これは当然です。

しかし、自分の専門分野の情報だけを見ていると、発想はどうしても既存技術の延長になりやすいものです。

小さな改良。
少しの性能向上。
今あるテーマの微修正。

それも大切ですが、大きな構想にはなりにくいことがあります。

私自身、研究に限らず、自然と入ってくる情報や、意図して取りに行った情報を見ながら、
「これは自分の研究と関係しないか」
と考える癖をつけるようにしていました。

通勤時間、ニュース、ネット記事、街中、学会、セミナー、展示会。生成AIとの壁打ちもあります。

妄想の種は、実験室の外にも落ちています。
大切なのは、それをただ眺めるのではなく、自分の専門性と結びつけて考えることです。

かき氷に火をつける。そこから研究アイデアは広がる。

たとえば、カフェで「かき氷 × 火」という演出を見かけたとします。
それをそのまま研究に活かすわけではありません。
大切なのは、「この演出は何が良いのか」と考えることです。

真剣に考えるというより、その発想にヒントを得る、という感じです。

かき氷は、当然溶けます。
そこに火という熱を加える。
普通に考えれば、「そんなことをしたら溶ける」と思います。

多くの人がそう思うからこそ、そこに演出の効果が生まれます。

キーワードは、おそらく「ギャップ」です。

冷たいものに、熱いものを合わせる。
溶けるはずのものに、火を近づける。
普通はやらない組み合わせだから、印象に残る。

ここから妄想が始まります。

BtoCの商品では、この「ギャップ」という言葉が使えるかもしれない。
自社の商品でギャップを生むなら、何ができるだろうか。
それを実現する技術要素は何だろうか。
その技術を確立するには、どんな研究が必要だろうか。
自分で研究テーマにできるのか。誰かと組むべきか。

こう考え始めると、アイデアは連鎖します。

かき氷は、きっかけにすぎません。
しかし、そのきっかけは日常生活の中にも落ちています。
それを拾い上げる研究者としての感度が、妄想力の原点だと思います。

イノベーションの原点は、掛け算である

イノベーションの原点は、掛け算です。

まったくのゼロから、突然すごいアイデアが生まれるとは限りません。
むしろゼロから何を生み出すケースは極めて稀です
多くの場合、何かと何かを掛け合わせることで、新しい価値が生まれます。

自社素材技術 × 高齢化社会
評価技術 × 生成AI
品質管理 × データ解析
農学の知識 × 気象情報

このような掛け算です。

自分の専門分野を極めることは重要です。
しかし、それだけでは発想が内側に閉じることがあります。

企業研究者に必要なのは、自分の専門性を持ったまま、外の情報を取りに行くことです。
そして、「これは自分の技術と掛け合わせられないか」と考える。

掛け算は2つ、3つと重ねられます。
新規性は高まる一方で、汎用性が下がり、ニッチになるかもしれません。

でも、妄想段階ではそれでよいのです。
最初のアイデアレベルでは、自由であることに価値があります。

妄想にお金はかからない。だから自由に出せばいい

妄想にお金はかかりません。
実験には費用がかかります。
設備投資にも費用がかかります。
会社でテーマを進めるには、根拠も計画も必要です。

しかし、妄想するだけなら無料です。
それなのに、多くの人は妄想の段階からブレーキを踏みます。

「どうせ無理だろう」
「予算がない」
「上司に通らない」
「うちの会社では難しい」

もちろん、現実を見ることは大切です。
ただ、最初から現実だけを見ていると、新しいアイデアは出にくくなります。

研究は苦しいことも多いです。
データは思い通りに出ません。
事業部には「それで何の価値があるの?」と言われます。

だからこそ、最初の妄想くらいは自由でいい。
自由に考えるからこそ、大きな構想の芽が出てきます。

妄想で終わらせず、構想へ育てる

ただし、企業研究者は妄想だけで終わってはいけません。

妄想は自由でいい。
しかし、そのままでは会社の中では動きません。

大切なのは、妄想を構想へ育てることです。

妄想とは、まだ根拠も仮説も整理されていないアイデアです。
構想とは、その妄想に顧客課題、技術的な可能性、事業価値、検証の道筋を加えたものです。

流れとしては、こうです。

妄想する。
構想する。
研究テーマにする。
研究仮説にする。
小さく検証する。
成果に変える。

今回の記事は、
【企業研究者】研究テーマの決め方|面白さを会社の価値に変える構想力| 企業研究者の価値創出スキル#2
【企業研究者】研究仮説の立て方|面白さを会社の価値に変える構想力II| 企業研究者の価値創出スキル#3
のさらに手前にある話です。

研究テーマが思いつかない。
いつも小さな改善テーマになってしまう。
会社の価値につながるアイデアが出ない。

そう感じているなら、まずは妄想の量が足りていないのかもしれません。

専門分野の外に目を向ける。
世の中の情報を拾う。
生成AIとも壁打ちする。
自分の専門性と掛け合わせる。
そして、「これが実現したら何が変わるか」を自由に考える。

そこから、構想は始まります。

まとめ

構想力の原点は、妄想力です。
妄想力とは、まだ研究テーマにも研究仮説にもなっていない段階で、未来の価値を自由に想像する力です。

その妄想は、実験室の中だけから生まれるものではありません。
世の中には、妄想の種が溢れています。

大切なのは、それを自分の専門性と掛け合わせることです。
妄想にお金はかかりません。
だからこそ、まず自由に考える。
そのうえで、妄想を構想へ育てていく。

企業研究者に必要な構想力は、そこから始まります。

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この記事を書いた人

農学博士(論文博士)、気象予報士。

修士課程修了後、研究職への就職に失敗。
研究補助の派遣社員として研究の世界へ戻り、
異分野の企業研究所へ転職。

約6年かけて論文博士を取得。
学位取得後も研究を継続し、実績は以下。

 ✅ 原著論文15報(筆頭著者10報)
 ✅ 学術著書9報(筆頭著者8報)
 ✅ 国内外で計6件の受賞歴あり
 ✅ 国内外学会発表合計34
 ✅ 特許出願合計22件

現在は研究開発から少し離れた部署でマネジメントに従事

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