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【企業研究者】研究テーマの決め方|面白さを会社の価値に変える構想力| 企業研究者の価値創出スキル#2

「この研究は、何の役に立つの?」

企業研究者であれば、一度はこの問いに向き合うと思います。

研究報告会では、それなりに説明できた。
データも悪くない。
技術的にも面白い。

それなのに、上司や事業部の反応が薄い。
「面白いけど、それで?」という空気になる。

しかし、この問いに答えられない研究テーマは、企業研究としては弱いです。
自分で意味を説明できない研究テーマを、他の誰かが意味付けしてくれるとは思わない方がよいです。

企業研究者に必要なのは、研究の「面白さ」を会社の「価値」に変える構想力です。逆に、会社の価値や顧客課題から、研究の面白さを見つける力でもあります。

この記事では、

企業研究者が研究テーマを決めるときに見るべき視点を整理します。
技術的な面白さを、顧客課題、自社の強み、事業貢献につなげる考え方が分かります。
上司や事業部に「なぜこの研究をやるのか」を説明するときのヒントにもなるはずです。

研究力だけでは足りない|会社で価値を生む4つの力| 企業研究者の価値創出スキル#1
で、企業研究者に必要な4つの力を整理しています。

目次

企業研究者の研究テーマは「面白い」だけでは足りない

企業研究者の研究テーマは、技術的に面白いだけでは足りません。

なぜなら、企業研究は会社の中で行う研究だからです。
最終的には、特許、製品開発、顧客課題の解決、既存事業の強化、新規事業の入口など、
何らかの会社の価値につながることが求められます。

たとえば、ある現象が科学的にとても面白いとします。
しかし、その現象が誰の課題を解くのか、どの技術に発展するのか、自社のどの強みと関係するのかを説明できなければ、社内では伝わりにくいです。

「面白いんです」だけで会社が動くなら、研究所は苦労しません。

企業研究者は、面白い研究を捨てる必要はありません。
必要なのは、その面白さを会社の価値に変える視点です。

研究テーマを決めるときの5つの視点

研究開発のテーマ設定では、5つの視点で見直すとよいです。

1. 技術的に面白いか。
2. 顧客課題につながるか。
3. 自社の強みと接続できるか。
4. 将来の事業貢献を説明できるか。
5. 小さく検証できるか。

この5つすべてが最初から揃う必要はありません。
基礎研究では曖昧な部分があって当然です。
しかし、1つも説明できないテーマは危ういです。

たとえば、素材の保存性を高める研究をしているとします。
それを単なる「物性改善」と見るのか、「食品ロス削減」「物流コスト低減」「長期保存商品の開発」まで広げて考えるのかで、研究テーマの意味は変わります。

技術シーズを顧客課題や事業貢献と結びつけることで、研究テーマは社内で説明しやすくなります。

面白さを価値に変える。価値を面白さに変える

企業研究者の構想力とは、面白さと価値を行き来する力です。

研究者は、どうしても技術的な面白さから考えがちです。
「この現象は面白い」「この材料は不思議だ」。
これは自然な感覚です。
むしろ、この面白がる力がなければ、研究は続きません。

ただし、企業研究ではそこで止まってはいけません。

この現象は、どんな課題解決につながるのか。
この技術は、どんな製品に使えるのか。
この知見は、自社のどの強みと組み合わせられるのか。

ここまで考えて初めて、研究テーマは会社の中で意味を持ち始めます。

逆に、会社の課題、顧客の困りごと、現場の違和感、社会の変化から、研究の面白さを見つけることもできます。

事業部が困っている課題を、単なる依頼対応として見るのか。
それとも、「ここには新しい研究テーマの種がある」と見るのか。

この差は大きいです。

小さな改善も大切だが、基礎研究には大きな構想がいる

企業研究では、小さな改善も大切です。

品質を上げる。
コストを下げる。
既存製品を改良する。
現場の困りごとを解決する。

これらは会社にとって重要な研究テーマです。

しかし、基礎研究から始めるなら、それだけでは足りない場合があります。

会社の上層部には、研究所に対して「今はまだ見えていない大きな可能性」を期待している人がいます。

既存事業の延長ではない未来。
自社技術から生まれる新しい価値。
将来の柱になるかもしれない技術。

こうした大きな構想を示すことも、企業研究者の役割です。

基礎研究の初期テーマは、最初からきれいな事業計画でなくてよいと思います。
むしろ最初は、少し怪しいくらいの妄想でよい。

ただし、その妄想を放置すると、ただの夢物語で終わります。
企業研究者の仕事は、妄想を仮説に変え、仮説をデータで殴れる形にすることです。

大きな構想は、最後は小さな仮説検証に落とす必要があります。

この流れは、
論文は文章から書くな|図表と統計で研究を前に進める方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#13
で詳しく書きました。

研究テーマは、仕事中だけに生まれるものではない

「研究テーマを考える時間がない」

そう感じる企業研究者は多いと思います。
実験、会議、報告資料、上司からの依頼、事業部対応。
毎日やることは山ほどあります。

しかし、本当にそうでしょうか。

研究テーマは、会議室で腕を組んでいても、そう簡単には出てきません。

研究テーマは仕事中だけに思いつくものではないと感じています。
日常で見たもの、聞いたこと、少し引っかかった違和感が、自分の専門領域と重なったときに、急にテーマらしく見えてくることがあります。

そもそも研究テーマは、ゼロから突然生まれるものではありません。
多くの場合、何かと何かの掛け算です。

自分の専門領域 × 未知の領域。
技術 × 顧客課題。
研究の面白さ × 会社の価値。
自社技術 × 社会変化。
基礎研究 × 将来の事業可能性。

休日にいつも仕事のことを考えろ、と言っているわけではありません。
頭の片隅にある研究のことと、見聞し、感じたことをつなぎ合わせることを意識することが重要ということです。

ふと見たニュース、現場で感じた違和感、他業界の当たり前。
そういうものが自分の専門とつながったときに、「あれ、これ研究テーマになるかもしれない」と見え方が変わることがあります。

今は生成AIもあります。
答えを鵜呑みにしてはいけませんが、自分の専門技術と他業界、顧客課題、社会変化を掛け合わせるアイデア出しには使えます。

自分で意味を説明できない研究テーマは弱い

最後に、ここが一番重要です。

企業研究者は、自分の研究テーマの意味を、自分の言葉で説明できなければなりません。

なぜこの研究をするのか。
なぜ今なのか。
なぜ自社がやるのか。
将来どんな価値につながるのか。
どんな仮説を検証しようとしているのか。

これに答えられないまま研究を進めると、成果が出ても会社の価値に変わりにくくなります。

「面白そうだから始めました」では弱いです。

「この技術は、将来この顧客課題を解く可能性がある」
「この知見は、自社の既存技術と組み合わせることで新しい用途につながる」
「今は基礎検討だが、成功すれば特許化や製品化の可能性がある」

ここまで説明できれば、研究テーマとしての説得力は高まります。
企業研究と特許の関係については、
企業研究者が学会発表・論文投稿の前に確認すべき特許出願と知的財産| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#4
で解説しています。

まとめ|構想力は、研究テーマを会社の価値に変える起点である

企業研究者の研究テーマは、技術的に面白いだけでは足りません。
しかし、面白さを捨てる必要もありません。

大切なのは、

面白さを会社の価値に変えることです。
そして、会社の価値から研究の面白さを見つけることです。

研究テーマは、最初から完璧でなくていいと思います。
ただし、自分で意味付けしようとしないテーマは、会社の中で強くなりません。

小さな改善も重要です。
ただし、基礎研究から始めるなら、大きな構想も必要です。
妄想だけでは会社は動きません。
大きく構想したら、次は仮説に落とす。
小さく検証する。
データで示す。
人を巻き込む。
成果を会社の価値に変える。

研究テーマは、与えられるだけのものではありません。自分で意味付けし、価値に接続していくものです。
企業研究者にとって構想力とは、研究力を会社の価値に変える起点なのです。

研究を積み上げて外部評価につながった経験は、
【社会人博士】博士号取得後に何が変わる?論文を積み上げた企業研究者が外部評価されるまで| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#25
で解説しています。

次の記事では、大きな構想や妄想を、どのように研究仮説へ落とし込むかを解説します。

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この記事を書いた人

農学博士(論文博士)、気象予報士。

修士課程修了後、研究職への就職に失敗。
研究補助の派遣社員として研究の世界へ戻り、
異分野の企業研究所へ転職。

約6年かけて論文博士を取得。
学位取得後も研究を継続し、実績は以下。

 ✅ 原著論文15報(筆頭著者10報)
 ✅ 学術著書9報(筆頭著者8報)
 ✅ 国内外で計6件の受賞歴あり
 ✅ 国内外学会発表合計34
 ✅ 特許出願合計22件

現在は研究開発から少し離れた部署でマネジメントに従事

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