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【企業研究者】研究テーマの進め方|小さく試して研究計画に変える検証方法|検証力I|企業研究者の価値創出スキル#7

研究テーマ候補が見えてきた。
少し面白い。
何かに使えそうな気もする。

けれど、上司に話そうとした瞬間、言葉が弱くなる。

「それ、本当にいけるの?」
「顧客価値につながるの?」
「会社としてやる意味はあるの?」

会議室でそう聞かれたとき、頭の中では可能性が見えているのに、口から出てくる言葉は曖昧になります。

「可能性はあります」
「面白いと思います」
「何かに使えるかもしれません」

自分でも、少し弱いとわかっている。
でも、まだ強く言い切れるだけの根拠がない。

企業研究者が研究テーマ候補を持ったとき、一番迷うのはここです。
アイデアはある。
でも、研究テーマとして前に進めるには、まだ根拠が足りない

この段階で、いきなり完璧な研究計画を作る必要はありません。
むしろ、最初から大きく考えすぎると動けなくなります。

まずやるべきことは、軽い仮説を、小さく検証することです。

面白そうなら、まず試す。
手元の材料や設備で、軽く当たりをつける。
行けそうなら前に進める。
ダメなら、一度脇に置く。

企業研究では、このフットワークの軽さが大切です。

ただし、軽く試すことと、雑に終わらせることは違います。
実験はラフでよい。
しかし、まとめるのは丁寧にする。
ここまでの記事では、研究テーマをどう構想するかを扱ってきました。
この記事からは、構想したテーマ候補を小さく試し、根拠に変えていく「検証する力」に入ります。

この記事では、企業研究者が研究テーマ候補を小さく検証し、研究計画に変えるための考え方を解説します。

この記事を読むと、

研究テーマ候補を次にどう進めればよいか
上司に説明できる根拠をどう作るか
行けそうなテーマと脇に置くテーマをどう見分けるか

がわかります。

目次

研究テーマ候補は、まだ研究テーマではない

研究テーマ候補は、まだ正式な研究テーマではありません。

理由は、候補の段階では不確かなことが多いからです。

技術的に成立するのか。
顧客課題につながるのか。
競合技術と差別化できるのか。
研究として深掘りする価値があるのか。

これらは、頭の中で考えているだけでは見えにくいものです。

面白そうなアイデアが出ると、すぐに研究テーマにしたくなることがあります。
しかし、その瞬間から年間計画、予算、人員、設備、関係部署の巻き込みまで考え始めると、急に動きが重くなります。

「もう少し考えてから」
「もう少し調べてから」
「もう少し確信が持ててから」

そう言っているうちに、何も試さないまま時間だけが過ぎることがあります。

もちろん、会社の研究テーマにするなら慎重さは必要です。
ただ、研究テーマにする前の段階では、慎重になりすぎるより、まず小さく動いた方がよいです。

構想する力で生まれた研究テーマ候補は、そのままではまだ会社に提案できる研究テーマではありません。
ここから必要になるのが、検証する力です。

前回の記事
【企業研究者】研究テーマ候補の絞り込み方
では、複数のアイデアを研究テーマ候補へ絞り込む考え方を解説しました。
本記事では、その候補をどう検証し、研究計画に進めるかを扱います。

研究テーマの進め方は「小さく試す」ことから始まる

研究テーマの進め方で最初にやるべきことは、小さく試すことです。

この段階で必要なのは、完成された仮説ではありません。

「この現象は使えるのではないか」
「この用途に展開できるのではないか」
「この顧客課題に効くかもしれない」

このくらいの軽い仮説で十分です。

なぜなら、最初の検証の目的は、成功を証明することではないからです。
目的は、当たりをつけることです。

私自身も、アイデアを正式な研究テーマにする前に、まず軽く実験してみることがありました。
完璧な条件検討ではありません。
正式なテーマ名も、詳細な実験計画もない段階で、手元にある材料や装置でまず試してみる。
いわゆる「闇実験」です。
まずは「この方向に反応があるか」を見るだけです。

その結果がきれいでなくても、「この方向は見る価値がありそうだ」「これは今ではない」と判断できることがあります。

頭の中だけでは、アイデアは都合よく見えます。
しかし、実際に手を動かすと、違う景色が見えます。

思ったより反応が弱い。
意外な課題がある。
逆に、想像以上に面白い傾向が出る。

この小さな手応えが、次に進めるかどうかの判断材料になります。

研究仮説の立て方については、過去記事
【企業研究者】研究仮説の立て方|研究テーマを会社の価値に変える方法
でも解説しています。
本記事では、その仮説を本格化する前に、小さく試す段階を扱っています。

研究テーマ候補の検証で見るべき3つのポイント

小さな検証では、細かく考えすぎる必要はありません。
ただし、何を見るかは決めておく必要があります。

何となく試すだけでは、次につながりません。
軽く試すからこそ、見るポイントは絞るべきです。

特に重要なのは、次の3つです。

見るポイント確認したいこと判断の目安
顧客課題につながるか誰のどんな困りごとに効きそうか使い道が少しでも見えるか
差別化できそうか競合技術や既存技術と何が違うか既存技術より面白い点があるか
研究として面白いか深掘りする余地があるか次に確かめたい問いが出るか

この段階では、時間もコストもかけすぎなくてよいです。
「おもしろそう」というレベルで、まず進めてよい。

考えすぎて動けないより、動きながら考える。
頭を動かしながら、手も動かす。

企業研究では、この姿勢が大切です。

小さく試せる研究者ほど、テーマの幅が広がる

小さく試せる研究者ほど、研究テーマの幅は広がります。

理由は、軽く検証できれば、アイデアを抱え込まず、複数の可能性を試せるからです。

企業研究では、最初から成功が見えているテーマばかりではありません。
むしろ、最初は曖昧です。

「これは何かに使えるかもしれない」
「この現象は面白い」
「別の用途に展開できるかもしれない」

このような段階のものが、後で大きな研究テーマになることがあります。

小さく試すことは、研究テーマの試食のようなものです。
いきなりフルコースを作る必要はありません。
まず一口味見してみる。

思ったよりいけるなら、次に進む。
違うと思ったら、材料を変えるか、いったん棚に戻す。

この軽さがあると、研究の引き出しが増えます。
いくつかの小さな試行が、後で別のテーマとつながることもあります。

フットワークの軽さは、研究者としての幅を決める要素の一つです。

行けそうなら進め、ダメなら脇に置く

小さく検証した結果、行けそうなら進めればよいです。
ダメなら、脇に置けばよいです。

ここで大事なのは、脇に置くことを失敗と考えないことです。

企業研究では、すべてのアイデアを本格テーマにする必要はありません。
むしろ、全部を進めようとすると、時間も人も足りなくなります。

簡易実験をして、期待した傾向が少し見えた。
小さな試作で、用途のイメージが湧いた。
競合技術と比べて、差別化できそうな点があった。

こうした手応えがあれば、次の検証に進めます。

一方で、

期待した変化がほとんど出ない。
技術的には面白いが、顧客課題に結びつかない。
研究としての広がりが弱い。

そう感じたなら、一度脇に置けばよいです。

脇に置くとは、捨てることではありません。
今はまだ本格テーマにする根拠が弱い、という判断です。

別の技術、別の用途、別のタイミングで、また使える可能性もあります。

研究テーマを進める力には、「前に進める力」だけでなく、「いったん止める力」も含まれます。

実験はラフでよいが、まとめるのは丁寧にする

小さな検証はラフでよいです。
しかし、やりっぱなしにしてはいけません。

ここがこの記事で最も重要です。

簡易実験をして、何となく面白かった。
試作してみて、何となく微妙だった。

そのまま終わると、何も積み上がりません。

数か月後に振り返ったとき、

「あれ、何を試したんだっけ」
「どの条件でやったんだっけ」
「なぜダメだと思ったんだっけ」

となるからです。

小さな検証でも、最低限、次の内容は残しておくべきです。

何を試したのか
✅ なぜ試したのか
✅ どの条件で試したのか
✅ 何が見えたのか
✅ 何が見えなかったのか
✅ 次に何を確認するのか
✅ 進めるのか、脇に置くのか

特に、結果は図表にしておくとよいです。
きれいな論文用の図表である必要はありません。
しかし、後で見返したときに、何を判断したのかがわかる状態にはしておく。

実験はラフでよい。
まとめるのは丁寧にする。

これができると、小さな検証が単なる思いつきではなく、研究者としての経験になります。

小さな検証でもPDCAを回す

軽い検証でも、必ずPDCAを回します。

理由は、やりっぱなしでは研究テーマの判断材料にならないからです。
小さくても、検証結果を次の行動につなげて初めて意味があります。

Planでは、何を確かめたいのかを決める。
Doでは、簡易実験や小さな試作をする。
Checkでは、結果を図表にまとめて振り返る。
Actionでは、次に進める、条件を変える、脇に置く、の判断をする。

このサイクルは、大げさに考える必要はありません。
1枚のメモでもよいです。
簡単な表でもよいです。

ただし、「やった」で終わらせず、「だから次に何をするか」まで決める。

小さなPDCAを回せる研究者は、テーマ候補を放置しません。
うまくいったものは育てる。
うまくいかなかったものは寝かせる。

その判断を積み重ねることで、研究テーマを見る目が鍛えられます。

小さな検証は、上司への説明を強くする

小さな検証をしておくと、上司への説明が強くなります。

理由は、「面白そうです」だけでは弱いからです。
企業研究では、面白さだけでなく、会社として進める根拠が求められます。

検証前の説明は、どうしても弱くなりがちです。

「可能性があります」
「何かに使えるかもしれません」
「面白いと思います」

これでは、聞く側は判断しにくいです。

しかし、小さな検証をしておくと、説明は変わります。

「簡易実験では、〇〇の傾向が見えました」
「小さな試作では、△△の課題が見えました」
「競合技術と比べると、□□に差別化の可能性があります」
「一方で、××はまだリスクです」
「次は条件を変えて再確認します」

ここまで言えると、研究テーマ候補は一段強くなります。

重要なのは、成功だけを語らないことです。
リスクも含めて説明できると、むしろ信頼されます。

企業研究における検証とは、成功を証明することではありません。
次に進めるだけの根拠と、まだ不明な点を明らかにすることです。

研究テーマを会社の価値につなげる考え方については、過去記事
【企業研究者】研究テーマの決め方|面白さを会社の価値に変える構想力
でも解説しています。
小さな検証は、その価値を説明するための材料になります。

検証結果が見えたら、研究計画に落とし込む

小さな検証で行けそうだと見えたら、次は研究計画に落とし込みます。

軽い検証だけでは、まだ正式な研究テーマとは言えません。
目的、仮説、評価指標、スケジュール、必要なリソースを整理して初めて、会社のテーマとして提案しやすくなります。

小さな検証で見えてくるのは、次のようなことです。

どの顧客課題に効きそうか
どの技術要素が鍵になりそうか
競合や既存技術とどこで差別化できそうか
どの評価指標で判断すべきか
どこにリスクがあるか
次にどの実験をすべきか

ここまで見えてくると、研究テーマ候補は研究計画に近づきます。

「企業研究者の価値創出スキル」シリーズでは、これまで「構想する力」を扱ってきました。
本記事からは、構想した研究テーマ候補を小さく試し、根拠に変える「検証する力」に入ります。

次回は、小さく検証した研究テーマ候補を、目的・仮説・評価指標・スケジュールを含む研究計画に落とし込む方法を解説します。

まとめ

研究テーマ候補は、いきなり本格テーマにしなくてよいです。
まずは軽い仮説を、小さく検証することが重要です。

候補の段階では、顧客価値につながるか、競合と差別化できるか、研究として面白いかは、まだ十分にはわかりません。
だからこそ、簡易実験や小さな試作で当たりをつけます。

行けそうなら進める。
ダメなら脇に置く。
ただし、やりっぱなしにはしない。

実験はラフでよい。
しかし、まとめるのは丁寧にする。

結果を図表に残し、PDCAを回し、次の行動につなげる。
それによって、小さな検証は研究者としての経験になります。

企業研究者に必要なのは、考え込むことだけではありません。
頭を動かしながら、手も動かすことです。

研究テーマは、会議室で悩んでいるだけでは強くなりません。
実験台の上で小さく試し、図表に残し、次の一手を決める。
その積み重ねの中で、研究テーマは少しずつ強くなります。

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この記事を書いた人

農学博士(論文博士)、気象予報士。

修士課程修了後、研究職への就職に失敗。
研究補助の派遣社員として研究の世界へ戻り、
異分野の企業研究所へ転職。

約6年かけて論文博士を取得。
学位取得後も研究を継続し、実績は以下。

 ✅ 原著論文15報(筆頭著者10報)
 ✅ 学術著書9報(筆頭著者8報)
 ✅ 国内外で計6件の受賞歴あり
 ✅ 国内外学会発表合計34
 ✅ 特許出願合計22件

現在は研究開発から少し離れた部署でマネジメントに従事

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