研究テーマが思いつかない。
アイデアを出せと言われても、何から考えればよいかわからない。
企業研究者なら、一度はこの壁にぶつかるはずです。
特に、若手〜中堅の企業研究者で「自分で研究テーマを考えて」と言われ始めた人ほど、急に手が止まることがあります。
「今の設備でできるだろうか」
「上司に通るだろうか」
「事業部が興味を持つだろうか」
「これは研究テーマと言えるのだろうか」
こう考え始めると、アイデアはどんどん小さくなります。
最初は少し面白そうだった発想も、気づけば無難な改善案になっている。
そのようなときに有効なのが、一人ブレストです。
前回の記事
【企業研究者】構想力の原点は妄想力|まだ仮説にならないアイデアを価値に変える考え方|面白さを会社の価値に変える構想力III| 企業研究者の価値創出スキル#4
では、研究テーマの起点として、まだ存在しない顧客価値や技術の使い方を想像する力について書きました。
ただし、妄想しただけでは研究テーマにはなりません。
一方で、妄想をいきなり研究仮説や実験計画にするのも早すぎます。
その間に必要なのが、一人ブレストです。
この記事では、企業研究者が研究テーマのアイデア出しをするときに、一人ブレストで発想を広げ、生成AIも壁打ち相手として使いながら、研究テーマ候補に近づける方法を書きます。
ブレストとは、正解を出す場ではなく発散する場である
ブレインストーミング(ブレスト)とは、アイデアを最初から評価せず、自由に出して発想を広げる方法です。
大事なのは、いきなり正解を探さないことです。
研究テーマを考えるとき、企業研究者はどうしても現実的な制約を考えます。
予算、設備、人員、期間、上司の反応、事業部の関心。
どれも大事です。
しかし、最初からそれを考えすぎると、発想が縮こまります。
会議で少し変わったアイデアを出した瞬間に、
と言われたら、その場の空気は一気に冷えます。
だからこそ、会議の前に一人で発想を広げる時間が必要です。
一人ブレストは、他人の評価を気にせず、妄想をいったん外に出す作業です。
企業研究者に一人ブレストが必要な理由
企業研究者に一人ブレストが必要なのは、研究テーマの種が、会議室で突然生まれるとは限らないからです。
むしろ、
から始まることが多いです。
たとえば、カフェで「かき氷 × 火」のような演出を見たとします。
それ自体を、そのまま研究テーマにするわけではありません。
しかし、そこで終わらせずに考えることはできます。
「冷たいものと熱いものを組み合わせると、なぜ面白いのか」
「反対の性質を掛け合わせると、新しい価値になるのではないか」
「自分の研究領域でも、意外な組み合わせは作れないか」
この段階では、まだ研究テーマではありません。
でも、研究テーマの種にはなります。
私自身も、論文や特許だけを見て研究テーマを考えていたわけではありません。
通勤中、出張先、店で見かけた演出、まったく関係なさそうな情報でも、
「これは自分の研究に何か関係しないか」
と考える癖をつけていました。
すぐにテーマになるわけではありません。
しかし、そういう小さな引っかかりが、後から別の情報とつながることがあります。
一人ブレストは、このような種を拾い上げる作業です。
頭の中で一瞬引っかかったものを、そのまま流さず、言葉にして残す。
そこから発想を広げていきます。
一人ブレストでは、最初から制約を設けない
一人ブレストで最も大切なのは、最初から制約を設けないことです。
もちろん、企業研究では最終的に実現可能性を考える必要があります。
事業価値も、顧客課題も、自社技術との接点も、検証可能性も重要です。
しかし、それは後でよいです。
最初から「上司に通るか」「設備があるか」「すぐ売れるか」を考えると、発想は一気に小さくなります。
| いったん脇に置くもの | 理由 |
|---|---|
| 予算 | 最初から考えると案が小さくなる |
| 設備 | 今ある装置だけで考えると広がらない |
| 人員 | 誰がやるかは後で考える |
| 上司の反応 | 評価を気にすると無難になる |
| 事業化可能性 | 初期段階では可能性を広げる方が重要 |
「それは無理だ」と判断する前に、まず出す。
「変な案だ」と消す前に、まず残す。
企業研究者は、普段から現実を見る仕事をしています。
だからこそ、意識して現実から少し離れる時間を作らないと、新しい発想は出にくいのです。
一人ブレストの進め方
一人ブレストは、難しく考える必要はありません。
おすすめは、次の流れです。
自分で起点を作る → 生成AIで広げる → 自分で整理する
ここで大事なのは、最初から生成AIに丸投げしないことです。
生成AIは便利です。
しかし、最初の起点までAIに任せると、自分の問題意識が薄くなります。
企業研究者が考えるべき起点は、自分の中にあります。
まずは、自分で書き出します。
きれいな文章にする必要はありません。
単語でも、矢印でも、雑なメモでも構いません。
次に、その起点を使って生成AIに壁打ちします。
以下の技術について、制約を考えずに用途案を10個出してください。突飛な案も含めてください。
このアイデアを、異分野の技術やサービスと掛け合わせて、研究テーマ候補として広げてください。
以下の妄想を、企業研究者が検討できそうな研究テーマ候補に変換してください。ただし、まだ実現可能性で絞り込まないでください。
生成AIのよいところは、自分では思いつかない方向に話を広げてくれることです。
ただし、自社の機密情報、未公開技術、顧客名、具体的な開発情報をそのまま入力するのは避けた方がよいです。
壁打ちに使う場合も、情報は抽象化し、一般化して入力する必要があります。
そして、生成AIの出力をそのまま研究テーマにしてはいけません。
それは、ただの候補です。
広げるのはAI。
選ぶのは自分。
この役割分担が重要です。
一人ブレストでアイデアはどう変わるか
一人ブレストの効果は、頭の中のぼんやりした違和感が、研究テーマ候補に近づくことです。
たとえば、「自社の評価技術 × 顧客の作業負荷」という起点を置いたとします。
このままでは、まだ研究テーマではありません。
しかし、ここから考えると、
「作業者が感覚で判断していた品質を、簡易評価で見える化できないか」
という研究テーマ候補が出てくるかもしれません。
まだ仮説ではありません。
実験計画でもありません。
しかし、研究テーマの種としては十分です。
このように、一人ブレストでは、最初から完成形を求めません。
まずは、違和感や掛け合わせを言葉にして、テーマ候補として残すことが目的です。
一晩寝かせて、行けそうかを吟味する
一人ブレストで出したアイデアは、その場ですぐ評価しない方がよいです。
発散している最中に評価を始めると、結局また縮こまります。
だから、まずは出すだけ出す。
そして、一晩寝かせます。
翌日、少し冷静になってから見直します。
このときの判断は、まだ厳密でなくて構いません。
見るべきポイントは、次の程度です。
「研究テーマ候補として残す価値があるか」
「顧客課題につながりそうか」
「自社技術と接点がありそうか」
「何らかの価値に変わりそうか」
「もう少し深掘りしたいか」
ここで初めて、「残す」「保留」「いったん捨てる」に分けます。
研究テーマとして整理する考え方は、
【企業研究者】研究テーマの決め方|面白さを会社の価値に変える構想力| 企業研究者の価値創出スキル#2
で詳しく書いています。
また、発散したテーマ候補を研究仮説に変える方法は、
【企業研究者】研究仮説の立て方|面白さを会社の価値に変える構想力II| 企業研究者の価値創出スキル#3
で扱っています。
一人ブレストは、仮説を完成させる場ではありません。
妄想を広げ、研究テーマ候補として残す価値があるかを見る場です。
まずは10分だけやってみる
一人ブレストは、大きな会議や立派な資料から始める必要はありません。
まずは10分だけで十分です。
紙でも、メモアプリでも構いません。
次の3つを書き出してみてください。
それぞれ3つずつ書けば、合計9個の起点ができます。
その中から一つ選び、生成AIに「用途を広げて」「異分野と掛け合わせて」「研究テーマ候補に変換して」と壁打ちしてみる。
それだけでも、一人ブレストの入口には立てます。
最初から立派な研究テーマにしようとしなくてよいです。
まずは、頭の中にあるものを外に出す。
それが第一歩です。
一人ブレストは、妄想を構想に変える中間工程である
企業研究者の価値創出は、いきなり研究計画から始まるわけではありません。
流れとしては、次のようになります。
妄想する。
⏬
一人ブレストで発散する。
⏬
研究テーマ候補にする。
⏬
構想に近づける。
⏬
仮説に絞る。
⏬
検証する。
この順番が大事です。
妄想だけでは、まだ頭の中の断片です。
一方で、いきなり仮説にするには粗すぎます。
その間に、一人ブレストで発想を広げ、言葉にし、候補として残す工程が必要になります。
まずは、自由に広げる。
その後で、企業研究として使える形に整える。
この順番を間違えないことが、研究テーマのアイデア出しでは重要です。
一人ブレストで迷いやすいこと
一人ブレストは何分くらいやればよいですか?
最初は10分で十分です。慣れてきたら30分程度、研究テーマ候補を広げる時間を取るとよいです。
また、時間を決めず、思いついた時にやる方が効果的です。
一人ブレストと普通のブレストの違いは何ですか?
普通のブレストは複数人で行います。一人ブレストは、他人の評価を気にせず、会議前に自分の発想を広げる作業です。
生成AIに研究テーマを考えさせてもよいですか?
丸投げはおすすめしません。起点は自分で作り、生成AIは発想を広げる壁打ち相手として使う方がよいです。
まとめ
企業研究者が新しい研究テーマを考えるとき、いきなり完成度の高い案を出そうとすると苦しくなります。
まず必要なのは、妄想を発散させることです。
そのために有効なのが、一人ブレストです。
最初の起点は、自分で作る。
そのうえで生成AIを壁打ち相手にして、用途、異分野、掛け合わせの可能性を広げる。
そして一晩寝かせてから、研究テーマ候補として残す価値があるかを吟味する。
まずは10分だけでも構いません。
最近気になったこと、自社技術でまだ使い切れていないもの、異分野と掛け合わせられそうなものを書き出してみる。
それだけでも、一人ブレストの入口には立てます。
一人ブレストは、妄想を妄想で終わらせないための工程です。
発散した後は、絞る段階に入ります。
次は、広げたアイデアをどのように構想や研究仮説に近づけるかが重要になります。
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