今日も一日、忙しかった。
実験をして、報告書を書いて、特許出願の対応をする。学会発表の準備もあれば、書きかけの論文もある。
それなのに、ふと考える。
「肝心の研究は、どれだけ進んだのだろう?」
企業研究者の仕事は、実験だけではありません。
しかも、研究テーマは一つとは限らない。
複数のテーマを抱えながら、次々と発生する仕事に対応しなければなりません。
私自身、そんな毎日を経験してきました。
特に大変だったのが、セルフマネジメントです。
限られた時間で何を先にやり、何を後に回すのか。
自分で判断しなければ、どの仕事も中途半端になりかねません。
そんな私が重視してきたのは、少し変わった考え方です。
「仕事は、重要度の高い順に片づける必要はない」
重要度が最も低い仕事を先に終わらせることもあれば、最重要の仕事をあえて後回しにすることもあります。
なぜ、そんなことをするのか。
この記事では、複数の研究テーマを担当してきた経験から、仕事の着手順をどう判断し、研究を前に進めていくのかを紹介します。
研究が進まないのは、研究以外の仕事が多いからかもしれない
研究が進まないとき、まず思い浮かぶのは実験の失敗や技術的な問題ではないでしょうか。
しかし、企業研究者には別の悩みもあります。
そもそも、研究に十分な時間を使えていない。
報告書、特許、学会発表、論文執筆。
さらに研究以外の雑務も多々あります。
一つの仕事に集中すれば、別の仕事が止まる。
かといって、すべてを少しずつ進めているだけでは、どれも中途半端になりかねません。
私も論文執筆がなかなか進まなかった経験があります。
重要だとわかっていても、目の前にはほかの仕事がある。
だからこそ、研究を前に進めるには、自分で仕事を管理する力が必須です。
これは単なる時間管理ではありません。
何に時間を使い、何を後に回すかを判断する力なのです。
なぜ私は、重要度の低い仕事を先に片づけるのか
仕事を進めるとき、重要なものから取り組むのが基本だと考える人も多いでしょう。
しかし、私は重要度だけで着手順を決めません。
重視しているのは、
抱えている仕事の項目数を、できるだけ減らすこと
です。
例えば、重要度は低くても、短時間で終わる仕事があります。
私は、そうした仕事は先に片づけてしまいます。
反対に、重要度が高くても、まとまった時間が必要な仕事や、他の人との調整が必要な仕事があります。
そのような仕事は、まず大まかな進め方を考え、取り組む時間を確保します。
つまり、重要度が最下位の仕事を今すぐ終わらせ、重要度1位の仕事を後回しにすることもあるのです。
「それでは、大切な仕事が進まなくなるのでは?」
その疑問はもっともです。
実際、私自身も論文執筆が進まず、苦労したことがあります。
だからこそ、仕事の数を減らすだけで満足してはいけません。
重要な仕事を放置するのではなく、取り組める状態を整える。
ここに、重要度と着手順を分けて考える意味があります。
タスクの数が増えると頭の整理ができません。
だから優先順位は低いけど、すぐに終わる仕事はサッサと終わらせてタスクの数を減らすのです。
これで重要な仕事に集中できる環境が整います。
複数の研究テーマを動かす、仕事の着手順の決め方
では、実際にどう判断すればよいのでしょうか。
私が考えるポイントは4つです。
① 締め切りから逆算する
最初に確認したいのは、いつまでに終わらせる必要があるかです。
重要度が低くても、期限が迫っている仕事はあります。
反対に、重要度が高くても、すぐに着手しなくてよい仕事もあります。
私は締め切りから逆算して計画を立て、日々何をすべきかを考えてきました。
重要度だけでなく、残された時間も判断材料にする。
これが基本です。
② すぐ終わる仕事は、抱え続けない
短時間で終わり、一人で完結する仕事なら、先に片づけることを考えます。
仕事の項目数が減れば、残った仕事を整理しやすくなります。
ただし、重要な実験や論文執筆に集中している最中まで、雑務に対応する必要はありません。
「すぐ終わる仕事を片づける」と「何でもすぐに対応する」は違います。
そのときの状況に応じて判断します。
③ 時間が必要な仕事は、先に時間を確保する
論文執筆のように、まとまった時間と集中力が必要な仕事があります。
こうした仕事は、重要だからといって、空いた数分だけで進められるとは限りません。
だから、まず大まかな進め方を考える。
そして、取り組む時間を確保する。
私自身、論文執筆がなかなか進まなかった経験があるからこそ、細かな仕事を片づけるだけで終わってはいけないと考えています。
仕事を10個終わらせても、研究の核心となる仕事が進んでいなければ、それで十分とは言えません。
大切なのは、何件処理したかではなく、研究をどれだけ前に進めたかです。
④ 自分一人でできるかを考える
仕事には、一人で完結するものと、他の人の協力が必要なものがあります。
他部署との調整や外部研究機関との共同研究などは、自分の都合だけでは進められません。
そのため、相手との調整に必要な時間も考慮します。
私自身、他部署や外部研究機関と連携し、自社にはない技術や設備を活用してきました。
共同研究によって研究が加速することもあります。
ただし、協力を得るには、相手にもメリットがある関係を考えることが大切です。
すべてを一人で抱え込まず、必要な人の力を借りる。
それも研究を前に進めるための判断です。
仕事の性質によって、進め方を変える
ここまでの考え方を整理すると、次のようになります。
| 仕事の特徴 | 進め方 |
|---|---|
| すぐ終わり、一人でできる | 可能なら先に片づける |
| 時間と集中力が必要 | まとまった時間を確保する |
| 他者との連携が必要 | 調整にかかる時間も考えて進める |
| 締め切りが迫っている | 期限から逆算して対応する |
この表は、絶対的なルールではありません。
実際の仕事では、複数の条件が重なるからです。
重要なのは、仕事を単純に重要度順に並べるのではなく、性質に応じて進め方を変えることです。
そして、状況が変われば計画も修正します。
研究は計画どおりに進むとは限りません。
うまくいかないときに、粘り強く取り組むべきか、進め方を変えるべきかを考える。
これは仕事の管理にも、研究そのものにも共通する考え方です。
忙しいのに研究が進まないとき、確認したいこと
仕事が山積みになったとき、私は次の4つを確認することが大切だと考えています。
- 研究の目的は何か?
今、何を明らかにし、どこまで進める必要があるのか。 - すぐに片づけられる仕事は何か?
短時間で終わる仕事を抱え続けていないか。 - まとまった時間が必要な仕事は何か?
重要な実験や論文執筆に取り組む時間を確保できているか。 - 誰かの力を借りられないか?
自分一人で進めるべき仕事なのか。
仕事の数を減らすことだけが目的になってはいけません。
研究を前に進めるために、今日何をするのか。
そこまで考えることが大切です。
これまでの「企業研究者の価値創出スキル」シリーズでは、研究テーマを構想する力、検証する力を扱ってきました。
研究テーマを小さく検証する方法は以下の記事で紹介しています。

また、研究テーマを継続するか、追加検証するか、保留するかの判断は以下の記事で解説しています。
今回からは、研究を実際に動かす「推進する力」です。
まとめ|忙しく働くことと、研究を前に進めることは違う
企業研究者は、実験だけをしていればよいわけではありません。
報告書、特許、学会発表、論文執筆。複数の研究テーマを抱えながら、さまざまな仕事を進める必要があります。
私が重視してきたのは、仕事の重要度と着手順を分けて考えることです。
そして、状況に応じて計画を修正する。
今日、何を終わらせたのか。
そして、研究はどれだけ前に進んだのか。
その両方を意識することが、企業研究者にとって大切なセルフマネジメントなのだと思います。

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