「この実験、何を確認するためにやったんだっけ?」
数週間前の実験データを開き、手が止まる。
実験ノートを読み返し、条件を確認する。
当時の仮説を思い出すころには、かなりの時間が過ぎている。
そんな経験はありませんか?
実験はしている。
データも増えている。
それなのに、研究が思うように進まない。
原因の一つは、
実験結果の整理と考察を後回しにしていること
かもしれません。
私は研究を進めるうえで、結果が出たらすぐにまとめ、考察することを大切にしてきました。
そして、次のアクションを仮決めします。
ただし、その場では本決めしません。
この記事では、私が実践してきた研究のPDCAの回し方を5つのステップで紹介します。
実験をやりっぱなしにせず、研究の停滞を防ぐための方法です。
研究のPDCAは、実験が終わってからが重要
研究のPDCAは、次の4つで構成されます。
そして、再びPに戻ります。
当たり前のことに思えるかもしれません。
しかし、実験が終わって結果が出ると、仕事が一つ片づいた気持ちになるものです。
でも、そこで立ち止まって考えてみてください。
その実験で何がわかったのか。
仮説は正しかったのか。
次に何を確かめるべきなのか。
そこまで考えなければ、次の研究にはつながりません。
実験が終わったことと、研究が前進したことは同じではないのです。
以前の記事では、研究テーマを小さく検証する方法を紹介しました。

今回は、その結果が出た後の話です。
ステップ1|結果が出たら、熱が冷めないうちに考察する
待っていた実験結果が出た。
「おっ、予想どおりだ!」
あるいは、
「あれ? 何でこうなるんだ?」
どちらにしても、結果が気になりませんか?
私は、研究が好きなら、自分の実験結果が気になるのは自然なことだと思っています。
だからこそ、結果が出たらすぐに整理し、考察します。
理由は二つあります。
一つは、実験の目的や条件、途中で感じた疑問を鮮明に覚えていること。
もう一つは、研究への熱がまだ冷めていないことです。
数週間も経てば、実験条件を確認し直し、当時の考えを思い出すところから始めなければなりません。
これは非効率です。
予想と違う結果は、新しい仮説の入口になる
考察では、仮説と実験結果が一致したかを確認します。
しかし、それだけでは不十分です。
予想と違ったなら、なぜ違ったのか。
別のメカニズムが働いているのか。
それとも、最初の仮説が間違っていたのか。
そして、その結果が研究全体の目的に対して、どのような意味を持つのかも考えます。
一つの結果から、いくつもの疑問が生まれる。
私は、そこに研究の面白さがあると思っています。
自分の仮説に結果を合わせるのではなく、結果から新しい仮説を考える。
この姿勢を大切にしたいものです。
仮説の考え方は、以前の記事でも紹介しています。

ステップ2|次の検証計画は、ラフなメモでよい
結果を考察すると、次の疑問が浮かびます。
「この考察は、本当に正しいのだろうか?」
「どうすれば、その確からしさを検証できるだろう?」
ここで、立派な研究計画書を作る必要はありません。
考察から生まれた仮説と、それを検証する道筋をラフに書き残しておけばよいのです。
例えば、植物の生育実験で、処理Aによって成長が促進されたとします。
| 項目 | ラフなメモの例 |
|---|---|
| 仮説 | 処理Aが根の発達に影響したのでは? |
| 検証方法 | 根の長さや重量を比較する |
| 実現可能性 | 今の設備で測定できそう |
※説明用に作成した架空の研究例です。
この程度の箇条書きで十分です。
大切なのは、翌日見返したときに、何を考え、どう検証しようとしていたのかわかること。
最初から完璧な計画を作ろうとする必要はありません。
ただし、一つ意識したいことがあります。
「できる実験」ではなく、「次の成果につながる実験」を考えることです。
試したいことは、いくらでも浮かぶかもしれません。
しかし、時間も設備も予算も無限ではありません。
何を明らかにすれば、研究目的に一歩近づけるのか。
その視点で、次のアクションを仮決めします。
検証計画をさらに磨く方法は、以下の記事で紹介しています。

ステップ3|すぐに仮決めする。でも、一晩寝かせる
ここが、私の研究の進め方で特に大切にしてきた習慣です。
結果をまとめ、考察し、次の検証案をメモする。
その流れで、次のアクションを仮決めします。
でも、すぐには本決めしません。
一晩寝かせるのです。
翌日、昨日のメモを見返して、もう一度考えます。
昨日は納得していた解釈。
ところが、改めて考えると、何か引っかかる。
「待てよ。この結果は、別の原因でも説明できるのでは?」
私自身、一晩置いて見直したことで、当初の解釈が間違っていたと気づいた経験があります。
別の仮説が浮かんだこともあります。
その場の勢いで本決めしていたら、見落としていたかもしれません。
翌日の見直しでは、次の3点を確認することをおすすめします。
・解釈は妥当か? 別の原因で説明できないか
・仮説に見落としはないか? 新たな可能性はないか
・次の実験に価値はあるか? 何を明らかにできるか
大切なのは、翌日に必ず違う答えを出すことではありません。
前日の判断を、できるだけ冷静かつ客観的に見直すことです。
考察は先延ばししない。しかし、判断は急がない。
この使い分けが重要だと考えています。
ステップ4|「次の実験をしない」という判断も必要
一晩寝かせて再評価したら、次のアクションを本決めします。
ただし、その答えが追加実験とは限りません。
そんな場合は、中止・終了することも選択肢です。
研究者としては、面白いテーマほど続けたくなるものです。
しかし、企業研究では面白さだけで続けるわけにはいきません。
何をするかだけでなく、何をしないかも決める。
これもPDCAのAです。
継続・保留の具体的な判断基準は、以下の記事で詳しく紹介しています。
ステップ5|次のPに戻り、PDCAを繰り返す
アクションを本決めしたら、次の研究計画に反映します。
次に何を明らかにしたいのかを整理し、再びPに戻ります。
そして実験し、結果を考察し、次の判断をする。
この繰り返しです。
毎回、目を見張るような発見があるわけではありません。
それでも、一つの結果から次の問いが生まれ、それを検証することで新しいことがわかる。
研究とは、そうした積み重ねではないでしょうか。
「後で考察しよう」が、研究成果を遠ざける
最後に、少し厳しいことを書きます。
「結果の整理は、後でやろう」
「考察は、時間ができたらまとめよう」
その「後で」が積み重なると、どうなるでしょう。
私は、研究者として、これは避けるべき状態だと考えています。
もちろん、研究以外の業務に追われることもあります。
しかし、実験をすることだけが研究者の仕事ではありません。
結果を整理し、考察し、何がわかったのかを他者に伝える。
そこまでが研究者の重要な仕事です。
日々の考察は、次の実験のためだけではありません。
報告書、学会発表、論文という形で成果を残すための土台にもなります。
研究と雑務の両立については、以下の記事で紹介しています。

また、論文執筆の進め方は以下の記事をご覧ください。

まとめ|すぐに考える。一晩寝かせる。そして次へ。
研究のPDCAを回すために、私が大切にしてきたのは次の5つです。
最初から完璧な研究計画書を作る必要はありません。
しかし、考えることを後回しにしてはいけません。
結果が出たら、すぐに考える。そして、判断は一晩寝かせる。
この習慣が、研究の停滞を防ぐ一つの方法になると考えています。
ここまでの「検証する力」では、研究テーマを小さく試し、その結果を次の行動につなげる方法を紹介してきました。
次回からは、決めた研究を周囲と協力しながら進める「推進する力」に入ります。

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