研究としては面白い。
技術的な可能性も感じている。
でも、ここから先、どう進めればいいのだろう。
企業研究をしていると、そんな壁にぶつかることがあります。
そんなとき、研究を動かすきっかけになるのが、何気ない雑談だったりします。
「ちょっと相談したいことがあるんだけど」
開発部門の知り合いに話してみる。
すると、自分では思いつかなかった意見が返ってくる。
話が盛り上がり、
という展開になることもあります。
実際、私は開発部門との人脈を起点に、工場やマーケティング部門も巻き込み、技術確立から商品化までつなげた経験があります。
そこで実感したのは、
企業研究者の実力は、自分が持つ知識や技術だけでは決まらない
ということです。
今回は、社内連携で他部署を巻き込み、研究を前に進める5つのコツを紹介します。
誰に相談し、どう協力関係を築き、研究成果につなげるのか。
そのヒントを持ち帰ってもらえたらと思います。
企業研究では「誰と組むか」も研究能力になる
企業研究を進めるには、他部署と協働する力が欠かせません。
なぜなら、研究成果を商品や事業につなげるには、研究部門だけでは足りないことが多いからです。
研究者は技術の原理や新しい可能性を追究する。
開発部門は製品への応用を、工場は安定した製造を、マーケティング部門は顧客への価値を考える。
同じ会社にいても、注目するところは違います。
だからこそ、一緒に考える意味があります。
一人の研究者が、すべての専門知識を持つ必要はありません。
これも企業研究者に求められる「推進する力」です。

社内連携は、バリューチェーンを理解することから始まる
では、誰に相談すればよいのでしょうか。
そのヒントが、会社のバリューチェーンです。
研究、開発、製造、マーケティング、販売。
各部門は異なる役割を担いながら、顧客に価値を届けるためにつながっています。
大切なのは、
自分の研究が、その流れのどこにつながるのかを考えること
です。
例えば、技術の製品への応用なら開発部門。
製造上の課題なら工場。
顧客ニーズを知りたいならマーケティング部門。
研究の段階によって、必要な相手は変わります。
最初から多くの人とつながる必要はありません。
まずは、今の研究を一歩進めるために、どんな専門性が必要なのかを考える。
そして、そこに相談できる人を見つける。
社内人脈づくりは、そこから始まります。
他部署を巻き込んで研究を進める5つのコツ
1.いきなり協力を頼まず、まず相談してみる
社内連携というと、会議を設定し、目的や役割を決める姿を想像するかもしれません。
もちろん、それも必要です。
しかし、私の経験では、何気ない雑談やちょっとした相談から協働につながることがよくありました。
「今、こんなことで困っているんだけど、どう思う?」
最初はこれくらいで十分です。
例えば開発担当者に、
「この技術、製品に使うとしたら、どこが課題になりそうですか?」
と聞いてみる。
思いがけない意見が返ってくるかもしれません。
大切なのは、最初から協力を取り付けようとしないことです。
その小さな相談が、研究を動かす第一歩になります。
2.相手の課題を知り、Win-Winの接点を探す
他部署には他部署の仕事があります。
研究者にとって重要な課題でも、相手にとって同じ優先順位とは限りません。
だからこそ、私はWin-Winの関係を大切にしてきました。
例えば、自分の研究が開発部門の技術課題の解決にも役立つなら、双方に協力する理由が生まれます。
そのためには、相手の話を聞くことです。
何に困っているのか。
どんな技術があれば助かるのか。
自分の研究との接点を探してみる。
「何を手伝ってもらうか」ではなく、「一緒に何を実現できるか」。
この視点が、単なる協力依頼を協働へと変えていきます。
3.専門性の違いを楽しみながら、議論を重ねる
研究者にとって魅力的な技術が、開発担当者にとっても魅力的とは限りません。
研究者は原理や新規性に興味を持つ。
一方、開発担当者は、製品に使えるのか、実用上の課題は何かを考える。
同じ技術を見ているのに、見ているところが違う。
私は、そこに社内連携の面白さがあると思います。
こうした気づきが、新しい研究アイデアにつながることがあります。
時には、自分の考えに厳しい意見が出ることもあるでしょう。
しかし、相手を説得することばかり考えていては、せっかくの機会を逃してしまいます。
異なる専門性を掛け合わせることで、一人では思いつかなかった可能性が見えてくる。
それが、社内連携の醍醐味です。
4.小さな相談を、実際の協働へ発展させる
話が盛り上がっても、「面白そうだね」で終わってしまっては、研究は前に進みません。
一緒に取り組む価値がありそうなら、次に何をするかを考えます。
私なら、次の3点を整理することを勧めます。
目的: 一緒に何を明らかにしたいのか。
役割: お互いの専門性をどう生かすのか。
次の一歩: まず何を、いつ頃までに確かめるのか。
最初から立派な研究計画書は必要ありません。
ただし、実際に協働を進める段階では、関係者との合意や必要な社内手続きも欠かせません。
また、研究が進むにつれて、新たな専門性が必要になることもあります。
開発部門との議論から工場へ。さらにマーケティング部門へ。
最初から全員を巻き込むのではなく、必要に応じて協働の輪を広げる。
これも、研究を前に進める大切な考え方です。
5.相手の時間を尊重し、次につながる関係をつくる
私が社内連携で特に難しいと感じてきたのは、相手の時間を確保してもらうことです。
相手にも通常業務があります。
こちらが熱心でも、同じように時間を使えるとは限りません。
そんなときは、相談内容を絞る。
短時間で意見を聞く。
時期を変える。
相手の事情に合わせて、できる方法を探します。
そして、協働によって成果が出たら、相手の貢献をきちんと認めること。
協力してくれた人にも成果が残るように考える。
次も一緒に仕事をしたいと思える関係をつくる。
その積み重ねが、研究を支える信頼関係になります。
【実体験】開発部門との人脈が、商品化へとつながった
私自身、社内人脈の力を実感した経験があります。
出発点は、開発部門の人とのつながりでした。
研究者としての視点と開発担当者としての視点を持ち寄り、さまざまなディスカッションを重ねました。
さらに工場やマーケティング部門も巻き込み、研究開発を進めました。
そして最終的には、技術確立から商品化までつなげることができました。
もちろん、雑談だけで商品が生まれたわけではありません。
技術的な検証も、関係部署との調整も必要です。
ただ、その出発点や協働を広げる過程で、人脈と信頼関係が重要な役割を果たしました。
この経験から学んだことがあります。
そして、協働を続けるには、相手にとっても価値があることが重要です。
研究室で生まれた技術が、さまざまな人の力を借りて商品になる。
自分一人では実現できなかったことが、形になっていく。
私は、そこに企業研究ならではの面白さを感じています。
社内人脈がない人は、何から始めればよい?
「社内連携が大切なのはわかった。でも、相談できる知り合いがいない」
そんな人もいるでしょう。
最初から幅広い人脈は必要ありません。
まずは、次の3つを考えてみてください。
直接知り合いがいなければ、上司や同僚に紹介してもらう方法もあります。
まずは、小さな相談を一つしてみる。
それがすぐに協働につながらなくても、相手の仕事や考え方を知る機会になります。
前回の記事では、複数の研究テーマや雑務を抱えながら、自分の仕事を前に進めるセルフマネジメントを紹介しました。

自分の仕事を管理すること。そして、周囲の専門性を生かすこと。
この両方が、企業研究者に求められる「推進する力」です。
まとめ|社内人脈は、研究成果を生み出す資産になる
企業研究では、自分一人で解決できない課題が数多くあります。
だからこそ、社内の人脈と信頼関係が重要です。
会社のバリューチェーンを理解し、必要な人に相談する。
相手のメリットを考え、異なる専門性を掛け合わせる。
そして、小さな相談を具体的な協働へ発展させていく。
研究者の実力は、自分一人で何ができるかだけでなく、周囲の人と一緒に何を実現できるかにも表れます。
研究が行き詰まったとき、一人で考え続けるだけでなく、誰かに話してみる。
その何気ない一言が、研究を大きく動かすきっかけになるかもしれません。
次回は「推進する力」の第3回として、大学、他企業、公的研究機関など、社外との共同研究の進め方を紹介します。

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