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【社会人博士】博士号取得後に何が変わる?論文を積み上げた企業研究者が外部評価されるまで| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#25

国際学会から招待講演の依頼が来たとき、最初はスパムメールかと思いました。

「え、本当に自分でいいのか?」

正直、そう思いました。

その後も、会ったことも、話したこともない海外の研究者から突然学術書籍の共同執筆に誘っていただいたり、国内の研究者から書籍のChapter執筆を任されたり、出版社から原稿執筆依頼をいただいたりしました。

学会発表が注目演題に選ばれ、いくつかのマスコミから取材を受け、日経新聞をはじめとする新聞に掲載されたこともあります。
さらに、個人として、また研究チームとして、複数の学会から合計5つの賞をいただくこともできました。

こう書くと、最初から順調だった研究者の話に見えるかもしれません。

でも、まったく違います。

異分野の企業研究所へ転職した直後、私はその分野では何者でもありませんでした。
実績もない。
名前も知られていない。
もちろん、国際学会や出版社から声がかかるような研究者でもありませんでした。

本当に、ゼロからのスタートでした。

この記事で伝えたいことは一つです。

論文を積み上げることは、博士号を取るためだけの作業ではありません。
企業研究者が、会社の外でも研究者として通用するための土台になります。

「論文を書いて、本当に意味があるのか」
「博士号を取った後、研究者として何が変わるのか」
「企業研究者でも、会社の外から声がかかる存在になれるのか」

そう感じている人に向けて、私自身の経験をもとに書いていきます。

目次

論文を積み上げると、会社の外で通用する材料になる

結論から言うと、論文を積み上げると、研究者としての見られ方が変わります。

1報の論文は、まだ点です。
もちろん、最初の1報には大きな価値があります。
私自身、最初の論文を書くまでにはかなり苦労しました。

しかし、2報、3報、5報と増えていくと、点が線になります

「あ、この人はこのテーマで継続して成果を出しているんだな」
「この分野について、一定の蓄積がある人なんだな」

外部の研究者から、そう見られるようになります。

会社の中では、肩書き、職位、部署での役割、上司の評価が大きな意味を持ちます。
しかし、会社の外では少し違います。

外部の研究者は、社内事情を知りません。
見られるのは、何を研究してきたのか、どんな論文を書いてきたのか、その成果がどのように積み上がっているのかです。

つまり、論文実績は、会社の外に出した研究者としての証拠です。

だからこそ、社会人博士や企業研究者にとって、論文を積み上げる意味は大きいのです。

※関連記事:
【社会人博士】論文は年間何報書けばよいか|年1報を目標にする意味| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#22
【社会人博士】インパクトファクター・被引用回数・h-indexとは?企業研究者が評価指標に振り回されない考え方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#23

博士号取得後に変わるのは、研究の見られ方である

博士号を取ると、何が変わるのか。

もちろん、学位そのものにも大きな意味があります。
社会人博士にとって、博士号取得は簡単なことではありません。
仕事をしながら研究を続け、論文を書き、博士論文にまとめるには、かなりの時間とエネルギーが必要です。

しかし、博士号取得後に本当に大きいのは、自分の研究が「一つのまとまったストーリー」として見られるようになることです。

原著論文を1報ずつ書いているときは、それぞれの成果は独立して見えます。
しかし、博士論文としてまとめることで、自分が何を明らかにしてきたのか、その分野に何を加えたのかが見えやすくなります。

研究は、点ではなく線になります。
さらに積み上がれば、線は面になります。

この「面」になったとき、研究者としての扱われ方が変わります。

単に論文を書いた人ではなく、あるテーマを継続して掘り下げてきた研究者として見られるようになるからです。

※関連記事:
社会人でも博士号は取得できる|論文ゼロから論文博士を取得した私のロードマップ| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#1

Review論文は、自分の研究を分野全体の中に置く仕事である

論文がある程度積み上がってきたら、Review論文に挑戦する意味も出てきます。

ただし、Review論文は初心者が最初に書くものではありません。
まずは原著論文を積み上げることが先です。

Review論文は、単なる文献紹介ではありません。

自分の研究だけでなく、

「この分野はどこから来たのか」
「今、何が分かっているのか」
「まだ何が分かっていないのか」
「次にどこへ向かうべきなのか」

を整理する仕事です。

原著論文を積み上げ、博士論文として研究のストーリーをまとめ、さらにReview論文で分野全体を見渡す。
ここまで来ると、自分の研究の立ち位置がかなり明確になります。

自分だけが「この研究は大事だ」と思っている状態から、その分野の流れの中で「この研究にはこういう意味がある」と語れる状態に変わるのです。

その結果として、学会や書籍、共同研究の場面で、名前を思い出してもらえる機会が増えていきます。

※関連記事:
【社会人博士】Review論文の書き方|文献整理・自己引用・先行Reviewとの差別化まで解説| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#24

招待講演や執筆依頼は、突然来たように見えて突然ではない

招待講演、書籍執筆、取材、受賞。

これらは、突然やって来たように見えます。
でも、実際には突然ではありません。

私の場合も、論文を書き、学会で発表し、博士論文にまとめ、Review論文にも挑戦する。
その積み上げの先にありました。

国際学会から招待講演の依頼をいただいたときは、本当に驚きました。
しかし同時に、少しだけ納得する気持ちもありました。

そのテーマについては、長い時間をかけて論文を書き続けてきたからです。

その後、海外の研究者から学術書籍の共同執筆の話をいただきました。
国内の研究者から書籍のChapter執筆を依頼されたこともあります。
出版社から、書籍の一部を書いてほしいと声をかけていただいたこともありました。

また、学会発表が注目演題に選ばれ、複数のマスコミから取材を受け、新聞に掲載されたこともあります。
研究室や会社の中で扱っていたテーマが、新聞記事として社会に出ていくのは、不思議な感覚でした。

さらに、これまでの業績を認めていただき、個人として、また研究チームとして、複数の学会から合計5つの賞をいただくことができました。

もちろん、最初からこれを狙っていたわけではありません。

一つずつ実験をする。
図表を作る。
統計を確認する。
Resultsを書く。
Discussionで悩む。
投稿する。
査読に対応する。
Rejectされて、飲みに行く。
それでも再投稿する。

そういう地味な積み上げの結果として、少しずつ声をかけていただく機会が増えていきました。

博士号はゴールではありません。
社会人博士にとって博士号は、研究者として会社の外へ出ていくための通過点でもあります。

論文を積み上げることは、自分の研究者人生を会社の中だけで終わらせないための手段です。

会社の外に、自分の研究を出す。
外部の研究者に読んでもらう。
名前を思い出してもらう。
声をかけてもらう。
任せてもらう。

その先に、自分でも想像していなかった世界が広がることがあります。

※関連記事:
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専門分野が狭くても、評価される研究者にはなれる

ここで大事なのは、広い分野で有名になる必要はないということです。

私の専門分野も、決して広い分野ではありませんでした。
誰もが知っている巨大な研究領域ではなく、むしろ限られた狭い専門領域だったと思います。

でも、狭い分野だから価値が低いわけではありません。

企業研究者の場合、研究テーマは会社の事業や技術領域と結びついていることが多く、専門分野が限定されやすいです。

しかし、限定されたテーマだからこそ、深く掘ることができます。
深く掘り、論文として外に出し続ければ、その分野で評価される可能性があります。

広い世界で全員に知られる必要はありません。

その分野の研究者から、
「あのテーマなら、この人だ」
と思ってもらえること。

それは、企業研究者にとって非常に大きな意味を持ちます。

「社会人博士(論文博士)ロードマップ」シリーズのまとめ:
論文を書くことは、研究者として外に出ることだった

この「社会人博士(論文博士)ロードマップ」シリーズでは、社会人博士・企業研究者が、一人の研究者として成果を積み上げるプロセスを書いてきました。

研究テーマを決める。
学会で発表する。
英語論文を書く。
図表を作る。
統計を確認する。
Resultsを書く。
Discussionを書く。
Introduction、Abstract、Titleを整える。
投稿前チェックをする。
査読に対応する。
Rejectされても再投稿する。
論文を積み上げる。
Review論文にも挑戦する。

そして最後に伝えたいのは、論文を書くことは、博士号取得のためだけではないということです。

論文を書くことは、研究者として会社の外に出ることです。
論文を積み上げることは、会社の外でも通用する研究者になるための道です。

ゼロからでも、一つずつ成果を積み上げれば、専門分野で評価される研究者になることはできます。

ここから先は、企業研究者として大切な考え方の話へ

ここまでの「社会人博士(論文博士)ロードマップ」シリーズは、個人として、一人の研究者として、どう成果を積み上げるかという話でした。

ここから先は、企業研究者として大切な考え方、行動のしかたに着いて話を進めます。

伸びる研究者と、途中で苦しくなる研究者は何が違うのか。
企業研究者に必要な力とは何か。
若い研究者をどう見てきたのか。

論文を積み上げた先には、自分でも想像しなかった世界がありました。
そして、研究者として会社の外で通用する力は、論文の積み上げから始まります。

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この記事を書いた人

農学博士(論文博士)、気象予報士。

修士課程修了後、研究職への就職に失敗。
研究補助の派遣社員として研究の世界へ戻り、
異分野の企業研究所へ転職。

約6年かけて論文博士を取得。
学位取得後も研究を継続し、実績は以下。

 ✅ 原著論文15報(筆頭著者10報)
 ✅ 学術著書9報(筆頭著者8報)
 ✅ 国内外で計6件の受賞歴あり
 ✅ 国内外学会発表合計34
 ✅ 特許出願合計22件

現在は研究開発から少し離れた部署でマネジメントに従事

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