※この記事はシリーズ第2回です。前回は「社会人が博士号を取得するまでのロードマップ」を解説しました。
今回はその第一歩である「何から始めるべきか」について、私自身の経験をもとにお話しします。
社会人博士に興味がある。
しかし、
- 大学はどう選べばいいのか
- 指導教員はどう探せばいいのか
- 論文は何本必要なのか
何から始めればよいのか分からない。
そんな企業研究者の方も多いのではないでしょうか。
私自身も28歳で企業研究者として再スタートした頃は同じでした。
論文はゼロ。
学会発表もゼロ。
博士号取得の道筋など全く見えていませんでした。
そんな私が最終的に博士号を取得できた経験から言えることがあります。
社会人博士を目指すなら、最初にやるべきことは大学探しではありません。
研究成果を積み上げることです。
この記事で分かること
この記事では、私自身の経験をもとに、
- 社会人博士を目指すなら最初に何をすべきか
- なぜ大学探しより研究成果の積み上げが重要なのか
- 論文ゼロ、学会発表ゼロから博士号取得への道筋がどのように見えてきたのか
について解説します。
これから社会人博士を目指す企業研究者の方が、遠回りを避けるための参考になれば幸いです。
なぜこの記事を書いているのか
私は28歳で企業研究者になった時、
- 論文ゼロ
- 学会発表ゼロ
の状態でした。
そこから研究成果を積み上げ、6年後に博士号を取得しました。
現在振り返ると、博士号そのものよりも、取得までのプロセスで得た
- 論理的思考力
- プレゼン力
- 文章力
- コミュニケーション力
- 時間管理能力
が大きな財産になっています。
この記事では、私が社会人博士取得に向けて最初に行ったことを解説します。
社会人博士を目指した理由
私が博士号取得を意識し始めたのは28歳の頃でした。
企業研究者として新しい分野に飛び込んだばかりの時期です。
当時の職場には博士号を持つ研究者が数多くいました。
そんな中、ある先輩の学位論文を見せてもらう機会がありました。
分厚い論文を手に取り、ページをめくりながら思ったことを今でも覚えています。
「こんなにたくさんの実験結果を出さなければならないのか」
正直、圧倒されました。
一方で、
「自分もいつかこんな研究をしてみたい」
という気持ちも湧いてきました。
世界を相手に研究したい。
一流の研究者として成長したい。
博士号取得は、そのための大きな目標になりました。
私は28歳で論文ゼロ、学会発表ゼロからスタートした
今でこそ博士号を取得していますが、スタート地点は決して華やかなものではありませんでした。
企業研究員1年目。
論文投稿実績ゼロ。
学会発表実績ゼロ。
会議では専門用語が飛び交い、周囲との知識差を痛感することもありました。
そして何より不安だったのは、
「本当に自分に論文が書けるのだろうか」
ということでした。
博士号以前に、研究者としてやっていけるのか。
そんな状態からのスタートでした。
研究所長の一言が背中を押してくれた
博士号取得は自分の中の目標でしたが、周囲の後押しもありました。
当時の研究所長から、
「やってみろ」
と言われたのです。
今思えば、この一言は大きかったと思います。
もちろん、言われたから取れたわけではありません。
しかし、自分の挑戦を応援してくれる人がいたことは大きな支えになりました。
入社時から共同研究という環境があった
私の場合、入社した時点で大学との共同研究が進んでいました。
研究テーマは自分で自由に決めたわけではありません。
共同研究の中で与えられたテーマに取り組むところから始まりました。
当時は、その共同研究が将来の博士論文につながるとは考えていませんでした。
ただ目の前の研究課題を解決し、成果を出すことだけを考えていました。
しかし振り返ると、この共同研究との出会いは博士号取得への大きな入り口だったと思います。
社会人博士を目指すなら最初にやるべきこと
私が実際に行ったことは次の2つです。
- 実験を繰り返す
- 文献を徹底的に読む
大学探しはしていませんでした。
指導教員探しもしていませんでした。
入試情報も調べていませんでした。
なぜなら、その時点では博士論文になる研究成果が何もなかったからです。
研究者として成果を出さなければ始まらない。
そう考えていました。
平日は研究に没頭し、文献を読み、実験を繰り返しました。
華やかな近道などありません。
地道な積み重ねだけでした。
最初の論文掲載で見えたもの
初めて論文が掲載されたのは32歳の時でした。
掲載決定の連絡を受けた時は本当に嬉しかったことを覚えています。
同時に安心もしました。
「自分にも論文が書けた」
そう思えたからです。
しかし、その直後に別のことも考えました。
「これをあと何回も繰り返すのか」
論文執筆は想像以上に大変でした。
英語は何度も修正されました。
査読では厳しいコメントも受けました。
原稿も何度も書き直しました。
それでも、その経験が次の論文につながっていきました。
博士論文のテーマは最初から決まっていなくてもよい
社会人博士を目指す人の中には、
「まず博士論文のテーマを決めなければならない」
と思っている人もいるかもしれません。
しかし私の場合は違いました。
博士論文のテーマは最初から見えていたわけではありません。
共同研究を続ける中で成果が蓄積されました。
実験データが増えました。
論文も少しずつ増えていきました。
そしてある時、
「この研究は博士論文としてまとめられるのではないか」
と見えてきたのです。
振り返ると、博士論文は最初から設計されたものではありませんでした。
研究成果を積み上げた結果として形になったものだったのです。
指導教員との出会いも共同研究がきっかけだった
社会人博士では指導教員との出会いが重要です。
私の場合、主査となった先生は共同研究先の大学教授でした。
共同研究を通じて研究内容を理解していただいていたことは非常に大きかったと思います。
研究成果がある。
その研究を理解してくれる指導教員がいる。
この両方が揃ったことで、博士論文としてまとめる道が開けました。
前回の記事でもお話ししたように、私が考える社会人博士成功の重要な要素は次の2つです。
- 研究成果を積み上げること
- 信頼できる指導教員と出会うこと
私の場合、共同研究がその両方につながっていました。
社会人博士を目指す人が陥りやすい落とし穴
今振り返ると、社会人博士を目指す人が最も注意すべきことがあります。
それは、
「考え過ぎて動けなくなること」
です。
どの大学が良いのか。
どの先生が良いのか。
論文は何本必要なのか。
気になる気持ちはよく分かります。
しかし、どれだけ調べても研究成果そのものは増えません。
社会人博士に必要なのは、最終的には研究成果です。
頭で考えることも大切ですが、それ以上に手を動かすことが重要です。
社会人博士で本当に得られたもの
博士号取得後、研究者としての日常が劇的に変わったわけではありません。
しかし、確実に変わったものがあります。
それは自信です。
そして今振り返ると、本当に価値があったのは博士号そのものではなく、取得までのプロセスだったと思います。
論文を書くために論理的に考える。
研究成果を分かりやすく伝えるためにプレゼン力を磨く。
共同研究先や指導教員と議論するためにコミュニケーション力を鍛える。
仕事と研究を両立するために時間管理を学ぶ。
文章を書く力も身につく。
これらはすべて博士号取得の過程で鍛えられました。
私は企業研究者にとって、学位取得のプロセスは最高の実践型研修だと思っています。
少なくとも、私自身はその過程で研究者として大きく成長できました。
よくある質問(FAQ)
Q. 社会人博士を目指すなら最初に大学を探すべきですか?
私の経験では違います。
まずは研究成果を積み上げることが優先です。
研究成果があることで、指導教員や博士論文のテーマも見えてきます。
Q. 論文が1本もなくても社会人博士を目指せますか?
目指せます。
私自身、企業研究員1年目の時点では論文も学会発表もゼロでした。
そこから研究成果を積み上げていきました。
Q. 博士論文のテーマは最初から決めるべきですか?
必ずしもそうではありません。
私の場合は共同研究を続ける中でテーマが見えてきました。
まずは研究成果を積み上げることが重要だと思います。
Q. 社会人博士と論文博士は違いますか?
論文博士は研究成果をまとめて学位を取得する制度です。
ただし制度は大学によって異なるため、事前確認が必要です。
Q. 社会人博士取得には何年かかりますか?
私の場合は7年でした。
研究テーマや研究環境によって大きく異なりますが、数年単位の長期戦になることが多いと思います。
まとめ|社会人博士は研究成果の積み上げから始まる
社会人博士を目指す人が最初にやるべきことは、
- 大学探し
- 指導教員探し
ではありません。
研究成果を積み上げることです。
私自身、
- 28歳
- 論文ゼロ
- 学会発表ゼロ
からスタートし、6年後に博士号を取得しました。
そして、その過程で得た最大の学びは、
才能より継続が重要だということです。
社会人博士を目指す若手研究者を、これまで何人も見てきました。
成功した人には共通点があります。
特別な才能ではありません。
コツコツと研究を続けたことです。
一方で、博士号に憧れていても行動が伴わない人は途中で止まってしまいます。
博士号取得は短距離走ではありません。
数年単位で続く長い挑戦です。
私が社会人博士を目指す人に伝えたいことは一つです。
継続すること。
毎日少しでも前に進むこと。
実験すること。
文献を読むこと。
考えること。
書くこと。
その積み重ねが、やがて博士号という形になります。
次回予告
次回は、
「社会人博士に必要な研究成果とは?私が論文ゼロから研究成果を積み上げた方法」
について、実体験をもとにお話しします。

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