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【社会人博士】論文は年間何報書けばよいか|年1報を目標にする意味| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#22

社会人博士を目指していると、必ず気になることがあります。

「論文は年間何報くらい書けばいいのか」
「このペースで博士号に届くのか」
「周りの研究者に比べて、自分は遅いのではないか」

特に、まだ1報目の論文を書き切ったことがない段階では、この不安はかなり大きいと思います。

論文を書いた経験がないのに、「年1報を目標にしましょう」と言われても、正直ピンときません。
山に登ったことがない人に、「毎年1回は富士山に登りましょう」と言われるようなものです。

私自身は、博士号取得を目指していた頃、明確に「年1報」を目標にしていました。

世界で競争できる研究者になりたい。
そのためには、年1報は最低限の目安だと考えていました。

ただし、これは「論文は多ければ多いほどよい」という意味ではありません。

質の低い論文をたくさん出しても、研究者としての力にはなりにくいからです。

この記事では、社会人博士や企業研究者が論文を年間何報目標にすればよいのか、私の経験をもとに整理します。

※参考記事
■ 査読論文4本までの道のり(博士号取得条件を満たす)
【実体験】論文博士に必要な論文数は何本?筆頭著者4報で博士号を取得した私が伝えたいこと | 社会人博士(論文博士)ロードマップ#9

目次

結論:社会人博士を目指すなら、まず年1報を目標にしてよい

結論から言うと、社会人博士を目指すなら、まずは年1報を目標にしてよいと思います。
理由は、年1報という目標があると、研究を止めにくくなるからです。

論文は、最後に文章だけを書いて完成するものではありません。

実験をする。
データを整理する。
図表を作る。
統計を確認する。
Resultsを書く。
Discussionを組み立てる。
投稿する。
査読に対応する。

この一連の流れを回して、ようやく論文になります。

仕事をしながら研究していると、この流れは簡単に止まります。
日々の業務、会議、報告、突発対応。
気づけば、データはあるのに論文になっていない。
Excelファイルは増えているのに、原稿は進んでいない。

これは企業研究者にはかなり起こりやすい状態です。

だからこそ、「年1報」という目標には意味があります。
本数ノルマではなく、研究を論文化するサイクルを止めないための目安です。

※関連記事
■ 研究テーマ設定〜最初の論文
【実体験】社会人博士(論文博士)は何から始める?論文ゼロから6年で博士号(論文博士)を取得した私の答え| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#2

■ 社会人博士の現実(現実的な難易度)
社会人博士に必要な研究成果とは?論文ゼロから博士号取得につなげた積み上げ方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#3

まず確認すべきは、大学や研究科の学位条件

ただし、「年1報を目指せばよい」と考える前に、必ず確認すべきことがあります。
博士号取得前であれば、自分が学位取得を目指す大学や研究科の博士号付与の条件です。

博士号取得に必要な論文数は、大学、研究科、専攻、学位申請の形式によって変わります。

原著論文が何報必要なのか。
筆頭著者である必要があるのか。
掲載済みでなければならないのか。
投稿中でもよいのか。

ここを曖昧にしたまま「年間何報」と考えると、目標設定を間違えます。

たとえば、3〜5年で博士号取得を目指すなら、必要な論文数から逆算して、どの年に何を投稿するかを考える必要があります。
そのとき、年1報という目標はかなり使いやすい目安になります。

課程博士の場合も、3年で3報を目指すというのも現実的な路線だと思います。
(その場合、博士課程に入る前に成果がないと厳しいかもしれませんが)

つまり、順番としてはこうです。

まず学位条件を確認する。
次に必要な論文数を逆算する。
そのうえで、年1報を目標にする。

この順番で考えると、「何となく不安」だった論文数が、少し現実的な計画になります。

ただし、論文は多ければ多いほどよいわけではない

一方で、論文数だけを追いかけるのは危険です。

研究者にとって論文数は重要です。
これはきれいごとではありません。
博士号取得でも、研究者としての評価でも、論文実績は大きな意味を持ちます。

しかし、質の低い論文をたくさん出せばよいわけではありません。

データの解釈が弱い。
図表が不十分。
統計的に言えることが少ない。
Discussionで言いすぎている。

こうした状態で無理に論文数だけを増やしても、長期的には研究力の蓄積になりにくいです。

論文は、実績欄を埋めるためだけのものではありません。
自分の研究で何を明らかにしたのかを、他者に検証可能な形で示すものです。

私は結果として、これまで原著論文15報、筆頭著者10報の論文に関わってきました。
その経験から見ても、論文数には意味があります。
ただし、数だけを目的にすると、研究の軸がぶれます。

目指すべきなのは、数を稼ぐことではありません。
質を保った論文を、継続的に出す力をつけることです。

※参考記事
■ 研究、論文執筆における統計解析の重要性
【社会人博士】論文のFigure作成で統計を避けてはいけない理由|見た目より「何が言えるか」で決まる| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#14

■ Discussionを書く時の注意点
【社会人博士】論文のDiscussionの書き方|推論しすぎずResultsから考察を組み立てる方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#16

最初の1報を書くまでが一番大変

年間何報という話をする前に、まず伝えたいことがあります。

最初の1報を書くまでが、一番大変です。

1報目は、何が分からないのかも分かりません。

どのデータを図表にするのか。
Resultsにはどこまで書くのか。
Discussionでは何を言ってよくて、何を言いすぎなのか。
投稿規定はどこまで確認するのか。

全部が初めてです。

私の場合も、データがそろったからすぐに論文になる、という感覚ではありませんでした。
図表を作っても、どこまでResultsとして書けるのか、どこからDiscussionなのかで何度も迷いました。

実験データはある。
グラフも作った。
けれど、それを並べても論文のストーリーにならない。
そんな感覚がありました。

最初の1報では、論文を書くというより、論文の型そのものを覚えていく感覚でした。

だから、論文初心者が最初から「毎年必ず1報出さなければ」と追い込みすぎる必要はありません。

まずは1報を書き切ることです。

1報書くと、論文の全体像が見えます。
次のデータを見たときに、
「これは論文で使える図表になるかもしれない」
「ここはResultsで書ける」
「この考察は少し言いすぎかもしれない」

と考えられるようになります。

※参考記事
■ 論文は図表の整理から
 論文は文章から書くな|図表と統計で研究を前に進める方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#13

■ Resultsを書く際の注意点
Resultsは難しくない|論文初心者がResultsとDiscussionを混同しない書き方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#15

年1報を目標にしても、毎年きれいに1本ずつ進むわけではない

年1報を目標にしていたとはいえ、毎年きれいに1本ずつ論文が生まれるわけではありません。

実験が進む年があります。
図表ばかり作る年があります。
投稿して待つ年があります。
査読コメントに苦しむ年もあります。
Rejectされて、別の雑誌に再投稿する年もあります。

だから、「今年1本受理されなかったから失敗」と考えすぎる必要はありません。

年1報の本当の意味は、研究を止めないことです。
年1報を目指すなら、常にどこかの段階に論文がある状態を作ることが大切です。

あるテーマは図表作成中。
別のテーマはResultsを整理中。
投稿予定の論文は投稿前チェック中。
査読中の論文はRevisionやRejectに備える。

このように、研究と論文の流れを止めないことが重要です。
年1報は、受理数だけを管理する数字ではありません。
研究を論文に変える流れを持ち続けるためのペースメーカーです。

※参考記事
■ 投稿前の注意点
【社会人博士】英語論文の投稿前チェックリスト|初投稿で見落としやすい確認項目| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#19

■ 査読コメントへの対応(Major Revision)
【社会人博士/論文博士】査読コメントへの回答方法|Major Revisionで論文が強くなる理由| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#20

目標とする論文数は、どこを目指すかで変わる

年間何報を書けばよいかは、自分がどこを目指すかで変わります。

博士号取得が目標なら、まずは学位取得に必要な論文数を満たすことが重要です。
企業研究者として社内で研究実績を積みたいなら、無理なく継続できるペースを作ることが大切です。

一方で、
世界で競争できる研究者になりたいなら、年1報は最低限の目安になると私は考えていました。

これが正しいのかは分かりません。
私は学位を取得した研究分野で研究を開始したのが、28歳の時と遅かったので、そのくらいのペースが必要ではないか・・・と考えたわけです。
誰かに言われたわけではありません。

もちろん、年1報出せない人は研究者失格、という意味ではありません。
研究分野、実験内容、会社業務、共著体制によって、論文の出やすさは大きく変わります。

それでも、研究者として成長したいなら、論文を書き続ける意識は必要です。

年間何報という問いは、単なる本数の話ではありません。
ただ、具体的な目標を決める方が、私の場合は取り組みやすかった、というわけです。

自分はどのレベルの研究者を目指すのか。
そのために、どのくらいのペースで研究成果を外に出すのか。

その問いだと思います。

年1報を目指すために、まず今の研究を4段階で整理する

年1報を実現するには、「論文を書く時間」だけ確保しても足りません。
必要なのは、論文になる研究の進め方です。

まずは、自分の研究テーマを次の4段階で整理してみてください。

  1. 図表化できるデータがあるか
  2. 統計処理まで終わっているか
  3. Resultsとして書ける結果があるか
  4. 投稿候補誌を考えられる段階か

この4つを見るだけでも、今の研究が論文からどれくらい離れているかが分かります。

図表作成前なら、まずデータを見える形にする。
統計処理が終わっていないなら、平均値の差だけで安心しない。
Resultsで書けることが少ないなら、追加実験が必要かもしれない。
投稿候補誌が見えないなら、論文の位置づけがまだ曖昧かもしれません。

年1報は、気合いだけでは達成できません。
研究を論文に変える仕組みが必要です。

まとめ:年1報は目標にしてよい。ただし、大切なのは継続する力

社会人博士を目指すなら、まず年1報を目標にしてよいと思います。
「そのうち書けたらいいや」
という考えだと、なかなか時間が取れず、結局論文を書けないことになりかねません。

ただし、最初に確認すべきなのは、自分が目指す大学や研究科の学位条件です。
そのうえで、必要な論文数から逆算し、年1報を目安にすると現実的な計画になります。

私自身も、世界で競争できる研究者になるには、年1報は最低限の目安だと考えていました。

ただし、年1報出せないから研究者失格ではありません。
論文は多ければ多いほどよい、という単純な話でもありません。
質の低い論文を増やしても意味はありません。

大切なのは、質を保ちながら、継続的に論文を出す力を身につけることです。

最初の1報は大変です。
でも、1報書くと見える景色が変わります。

年間何報を書くべきか。

その答えは、自分がどこを目指すかで変わります。
しかし、研究者として成長したいなら、論文を書き続ける意識だけは持っておいた方がよいです。

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この記事を書いた人

農学博士(論文博士)、気象予報士。

修士課程修了後、研究職への就職に失敗。
研究補助の派遣社員として研究の世界へ戻り、
異分野の企業研究所へ転職。

約6年かけて論文博士を取得。
学位取得後も研究を継続し、実績は以下。

 ✅ 原著論文15報(筆頭著者10報)
 ✅ 学術著書9報(筆頭著者8報)
 ✅ 国内外で計6件の受賞歴あり
 ✅ 国内外学会発表合計34
 ✅ 特許出願合計22件

現在は研究開発から少し離れた部署でマネジメントに従事

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