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【社会人博士/論文博士】査読コメントへの回答方法|Major Revisionで論文が強くなる理由| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#20

目次

はじめに|“Decision on Manuscript” は、何度見ても慣れない

論文を投稿した後、私が最も嫌いな時間があります。
査読結果を待つ時間です。

投稿してしまえば、著者にできることは何もありません。
あとは編集部からの連絡を待つだけです。
数週間後、メールが届きます。

件名は、
“Decision on Manuscript”
この件名を見ると、今でも少し身構えます。

すぐに開けばいいのですが、開けない時もありました。

「Rejectではないだろうか」
「Major Revisionだろうか」
「Minor Revisionで済むだろうか」

私の経験では、ほとんどがMajor Revisionでした。
たまにMinor Revision、そして時にはRejectもありました。

Major Revisionは、Rejectではないという意味では安心します。
しかし同時に、コメント量を見るとうんざりします。
「採択の可能性はある。ただし、相当直しなさい」
私にとってMajor Revisionは、そういう通知でした。

ただ、論文を書き続け、さらに査読する側も経験して、考え方は大きく変わりました。

今では、
査読は論文を第三者視点で客観的に評価してもらえる最重要プロセスの一つ
だと考えています。

本記事では、社会人博士として論文投稿を経験し、その後査読者も経験した立場から、査読コメントへの回答方法とMajor Revisionを乗り越える考え方を解説します。

論文執筆そのものについては、
■ 論文の書き方(全体像)
【社会人博士・企業研究者向け】投稿論文は何から書く?論文執筆の全体像を解説| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#12
で詳しく書いています。
本記事では、投稿後に避けて通れない査読対応に絞ります


査読コメントは、まず受け止める

結論から言います。
査読コメントへの回答で最も重要なのは、まず真摯に受け止めることです。

最初の頃の私は、査読コメントを読むのが下手でした。
コメントを読みながら、頭の中ですぐ反論していました。

「それは本文に書いてある」
「この方法は普通なのに」
「なぜそう読むのか」

そう思いながら読むと、コメントの本質が見えなくなります。

もちろん、Reviewerがすべて正しいわけではありません。
私自身、
「これは本当に論文を理解しているのだろうか」
と感じたこともあります。

それでも、最初に考えるべきことは反論ではありません。
「なぜ査読者はそう解釈したのか」
です。

論文査読は、文字だけのコミュニケーションです。
学会発表のように、その場で補足説明はできません。
日本人的な阿吽の呼吸も通用しません。
原稿に書いてあることがすべてです。

つまり、査読者が誤解したのであれば、こちらの説明が足りなかった可能性があります。

私の経験では、査読コメントの半分以上は納得できるものでした。
そして、納得できる指摘ほど、論文を確実に良くしてくれました。


査読コメントが届いたら行う5つのステップ

Major Revisionのコメントを見ると、最初は大きな山に見えます。
しかし分解すれば、一つひとつは対応可能な作業になります。
私が意識していた流れは、次の5つです。

Step1:まず最後まで読む

最初から反論しながら読まないことです。
感情的になると、コメントの本質を見失います。
まずは最後まで読み、査読者が何を問題にしているのかを把握します。

Step2:コメントを分類する

次に、コメントを分類します。
例えば、次のように分けます。

✅ すぐ修正できる指摘
✅ 説明を追加すべき指摘
✅ 追加解析が必要な指摘
✅ 追加実験が必要な指摘
✅ 反論が必要な指摘

分類すると、不安が作業に変わります。
「大変そうだ」ではなく、「何をすればよいか」が見えてきます。

Step3:共著者と方針を決める

特に研究目的、解釈、追加実験の要否に関わる指摘は、自分一人で判断しない方が良いです。
共著者と相談し、どこまで修正するのか、どこは反論するのかを決めます。

Step4:本文を修正する

査読コメントへの回答だけでは不十分です。
必要な指摘については、論文本体を修正する必要があります。
回答書で説明しても、本文が変わっていなければ論文は良くなりません。

Step5:回答書を丁寧に書く

Response Letterでは、査読者への敬意と論理的な説明を意識します。
例えば、方法の選択理由を問われた場合は、次のように回答します。

Thank you for your valuable comment. We have added an explanation for why this method was selected in the revised manuscript.

そのうえで、
「Page X, Line Y-Zに追記しました」
と修正箇所を明確に示します。
査読者に探させないことも、重要な配慮です。


Major Revisionには2つのパターンがある

私の経験では、Major Revisionには大きく2つのパターンがあります。

一つ目は、論文の根幹を指摘されるケースです。
研究目的は妥当なのか。
その解釈で本当に良いのか。
その結論はデータから導けるのか。
こうした指摘は重いです。
論文の価値そのものを問われている可能性があるからです。

実際、私は方法論に疑義を呈されてRejectになった経験があります。
ただ、その方法は当時の分野では極めて一般的な方法でした。
査読結果を読んでも、正直、何が問題なのか納得できませんでした。

そこで別の雑誌へ投稿しました。
結果は掲載。
この経験から学んだのは、Rejectは必ずしも研究の価値を否定するものではないということです。

もう一つは、細かな指摘が大量に来るケースです。
図表、統計解析、引用文献、表現などに関するコメントです。
私が経験した中では、10〜20件程度のコメントが付くことも珍しくありませんでした。

一度だけ、査読者が6人いたこともあります。
その時は、
「なぜ6人もいるのか」
と思いました。
コメント量にうんざりしました。

ただし、一つひとつ確認すると、妥当な指摘も多くありました。
結果的に、論文は確実に良くなりました。


科学は、こちらの事情を考慮してくれない

査読対応で最も負荷が大きいのは、追加実験です。

私も査読者から追加実験を求められた経験があります。
数週間かけて実験を行い、その結果を論文へ反映しました。

最初に感じたのは、

「必要性は分かるが、大変だ」

ということでした。

しかし、査読者の指摘は正しかったのです。
追加データによって、Discussionの論理展開が補強され、論文の完成度は明らかに上がりました。

問題は、追加実験が簡単にできない場合です。

特に企業研究では、研究者個人の判断だけでは動けないことがあります。
他テーマとの兼ね合いもあります。
設備やサンプルの都合もあります。
事業スケジュールもあります。
しかし、科学はその事情を考慮してくれません。

科学的には、必要なデータがあるか。
ないか。
それだけです。

だからこそ、
追加実験ができない場合は、データの限界を認めたうえで、論理的に説明する必要があります。

ここが査読対応で最も難しいところだと思います。


査読コメントを無視してはいけない

査読コメントへの回答で、最も避けるべきことがあります。
それは、コメントを無視することです。

これは確実に印象が悪くなります。
査読は、論文を改善するための共同作業です。コメントを無視してしまっては、査読の意味がなくなります。
もちろん、すべてのコメントに従う必要はありません。
納得できない指摘には、反論して構いません。

私も反論が認められた経験があります。
ただし、感情的に反論してはいけません。
必要なのは、データと論理に基づく説明です。

査読者と戦う必要はありません。
科学的に議論するだけです。


査読者になって、少し怖くなった

論文を投稿し続けていると、編集者から査読依頼が来るようになります。
私も10回以上、査読を担当しました。

査読者になって、最も驚いたことがあります。
論理が整理されていない論文が、想像以上に多かったのです。
著者本人は分かっています。
研究の背景も、実験の意味も、データの解釈も。

しかし、それが文章の中でつながっていない。

ResultsからDiscussionへの流れが弱い。
図表を見ても、何を言いたいのか分かりにくい。

読んでいて、途中で何度も立ち止まることがありました。

その時、少し怖くなりました。
自分の論文も、査読者からはこう見えていたのかもしれない。

これはかなり大きな気づきでした。
査読する側を経験して初めて、論文は著者の理解を示すものではなく、読者に理解してもらうためのものだと実感しました。

逆に、「この論文は通りそうだな」と感じる論文には共通点があります。

論理が一貫していること。
結論に無理がないこと。

査読される側だけでなく、査読する側を経験したことで、私自身の論文の見方も大きく変わりました。


コラム|自分の論文によく似た原稿が回ってきた

査読者として、今でも強く覚えている経験があります。
自分が過去に発表した研究と、非常によく似た原稿が査読として送られてきたことです。

タイトルと目的を見た瞬間、
「同じではないか!」
と思いました。

最初は偶然かもしれないとも考えました。
研究テーマが近ければ、似た表現になることはあります。
しかし内容を読み進めるうちに、違和感は確信に変わりました。

これは通常の査読として扱うべきではない。
そう判断し、すぐに編集者へ連絡しました。

研究倫理については話として聞いたことがありました。
しかし実際にそのような場面に遭遇すると、本当に驚きます。

論文は成果を示すものです。
しかし、その前提には誠実さがあります。
そのことを改めて感じた出来事でした。


まとめ|Major Revisionに落ち込む必要はない

私は、査読される側にも、査読する側にもなりました。
その経験を通じて確信していることがあります。

査読は、論文を第三者視点で客観的に評価してもらえる最重要プロセスの一つです。

著者は自分の研究を知りすぎています。
だから盲点が生まれます。
その盲点を見つけてくれるのが査読です。

もちろん、腹が立つコメントもあります。
納得できない指摘もあります。
それでも振り返れば、多くの論文は査読によって良くなりました。

だから私は今でも査読を歓迎しています。
嬉しくはありませんが。

もし今、Major Revisionのコメントを前に悩んでいるなら、一つだけ伝えたいことがあります。

Major Revisionに落ち込む必要はありません。

そこから論文は強くなります。

次回の記事では「Reject」の場合の対応について書きます。

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この記事を書いた人

農学博士(論文博士)、気象予報士。

修士課程修了後、研究職への就職に失敗。
研究補助の派遣社員として研究の世界へ戻り、
異分野の企業研究所へ転職。

約6年かけて論文博士を取得。
学位取得後も研究を継続し、実績は以下。

 ✅ 原著論文15報(筆頭著者10報)
 ✅ 学術著書9報(筆頭著者8報)
 ✅ 国内外で計6件の受賞歴あり
 ✅ 国内外学会発表合計34
 ✅ 特許出願合計22件

現在は研究開発から少し離れた部署でマネジメントに従事

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