MENU

【社会人博士】Review論文の書き方|文献整理・自己引用・先行Reviewとの差別化まで解説| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#24

ある日、雑誌の編集部からReview論文の執筆依頼が来ました。

「えっ、自分がReview論文を?」

と思うと同時に、すごく嬉しかったのを覚えています。

「ああ、自分の研究が少しは認められたのかもしれない」

そう感じました。
しかし、その直後に別の感情も出てきました。

「自分がこの分野を語っていいのだろうか」

原著論文なら、自分の実験結果や解析結果を中心に書けます。
しかしReview論文は違います。
その分野の歴史、主要論文、最新研究、未解決課題を整理し、研究全体の流れを示す必要があります。

少し大げさに言えば、Review論文を書くことは、その分野の地図を描くようなものです。

私の場合、筆頭著者論文が6報以上ある段階でReview論文の執筆を誘われました。
だからといって自信満々だったわけではありません。嬉しさはありましたが、不安もありました。

この記事では、

社会人博士や企業研究者に向けて、Review論文とは何か、いつ書くべきか、文献整理、自己引用、先行Reviewとの差別化まで、実体験をもとに解説します。

目次

Review論文とは、分野全体を整理する論文である

Review論文は、原著論文とは役割が違います。

原著論文は、自分の実験や解析で得られた新しい結果を報告する論文です。
一方、Review論文は、その分野で何が分かっていて、何が未解決で、現在どこまで研究が進んでいるのかを整理する論文です。

つまりReview論文は、単なる文献紹介ではありません。

有名な論文を順番に並べるだけなら、文献リストに少し説明を足しただけになります。
重要なのは、研究の流れをつかむことです。

なぜその研究が始まったのか。
どの論文が転換点だったのか。
どの技術や考え方が分野を前に進めたのか。
今、どこに課題が残っているのか。

これらを整理して、読者が分野全体を理解できるようにするのがReview論文です。

※関連記事
【社会人博士】Introductionの書き方|論文を読み、研究背景と目的をつなげる方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#17
→ Review論文を書くには、日頃から論文を読む量と質の両方が必要です。

Review論文は、初心者がいきなり書くものではない

Review論文は魅力的です。

自分の研究分野を広く語れる。
自分の論文も引用できる。
引用される可能性もある。
研究者としての存在感も出せる。

しかし、論文初心者がいきなりReview論文を書くのは難しいです。

理由はシンプルです。
分野全体を語るには、自分自身の研究実績と、主要論文を読み込んだ蓄積が必要だからです。

自分の論文が少なすぎる段階でReviewを書いても、説得力は弱くなります。
主要論文を十分に読んでいなければ、重要な流れを見落とします。
自分の研究を強く見せたい気持ちが前に出すぎると、Reviewではなく自己宣伝になります。

これでは、読者にも査読者にも見抜かれます。

まずは原著論文を書く。
筆頭著者論文を積み上げる。
その過程で、主要論文を読み、自分の研究テーマの流れを理解する。

Review論文は、その先にある論文です。

※関連記事
 論文は文章から書くな|図表と統計で研究を前に進める方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#13
→ Review論文に進む前に、まずは原著論文を積み上げる必要があります。

Review論文を書く前に確認したい5つのこと

Review論文を書く前に、最低限確認したいことがあります。

1つ目は、
主要論文を押さえているか。
その分野を語る以上、重要な先行研究を落とすわけにはいきません。

2つ目は、
最新研究を追えているか。
古い情報だけで書くと、Review論文としての価値は弱くなります。

3つ目は、
先行Reviewがあるか。
すでに優れたReviewがあるなら、自分のReviewでは何を新しく示すのかを考える必要があります。

4つ目は、
自分の論文を客観的に位置づけられるか。
自分の研究を入れること自体は自然ですが、主役は自分ではなく研究分野全体です。

5つ目は、
未解決課題や今後の展望を示せるか。
Review論文は過去を整理するだけでなく、次に何が必要かを示す論文でもあります。

この5つが曖昧なまま書き始めると、ただ長いだけの文献カタログになりやすいです。

Review論文の書き方は、文献を並べることではない

Review論文を書くときは、最初に文献を集めるだけでは不十分です。
大切なのは、研究の流れをどう見せるかです。

私の場合は、文献をExcelなどで整理しながら、どの論文をどの流れに入れるかを考えました。
単に年代順に並べるだけでなく、研究テーマや論点ごとに分類する必要があります。

現実的な手順は、次の流れです。

まず、その分野の主要論文を整理する。
✅ 次に、研究の歴史と転換点を確認する。
✅ そのうえで、最新研究を追加する。
✅ さらに、論点ごとに文献を分類する。
✅ 最後に、自分の論文がその流れのどこに位置するのかを確認する。

ここで難しいのは、何を入れて、何を削るかです。

すべての論文を入れようとすると、Review論文はただの文献カタログになります。
一方で、重要な論文を落とすと、分野を正しく整理できません。

Review論文の書き方で大切なのは、文献数を増やすことではなく、読者が研究の流れを理解できる構成を作ることです。

※関連記事
【社会人博士】論文は年間何報書けばよいか|年1報を目標にする意味| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#22
→ Review論文に進む前提として、まずは筆頭著者論文を積み上げることが重要です。

先行Reviewとの差別化を考える

Review論文を書くときは、先行Reviewとの差別化も重要です。

すでに同じテーマで優れたReview論文があるなら、同じ文献を並べ直すだけでは新しいReviewを書く意味が弱くなります。

対象とする時代を新しくするのか。
最新技術に焦点を当てるのか。
別の論点から研究を整理するのか。
自分の研究テーマに近い切り口で再構成するのか。

Review論文では、文献を集める前に「このReviewは何を新しく見せるのか」を決めることが重要です。
ここが決まると、論文全体の構成も作りやすくなります。逆に、ここが曖昧だと、どこかで読んだことがあるReviewになってしまいます。

Review論文では、自分の論文も引用してよい

Review論文では、自分の論文を引用してよいです。
というより、自分の研究がその分野の流れの中にあるなら、引用するのは自然です。

私もReview論文を書く中で、自分の論文を引用しました。
そのとき、少し誇らしい気持ちはありました。

ただし、Review論文は自分の研究の宣伝パンフレットではありません。

自分の論文を引用するときは、「自分たちがすごい」と書くのではなく、
「この研究の流れの中で、この論文はどの問いに答えたのか」
を示す必要があります。

自分の論文は主役ではありません。
主役は、その研究分野全体です。
その中に、自分の研究を一つのピースとして置く。

この感覚が大切です。

自分の論文が少ないうちは、Reviewではなく原著論文を書くべきです。
Review論文は、これまでの研究実績を土台にして、自分の研究を世界の文脈に置き直す作業だからです。

※関連記事
【社会人博士】インパクトファクター・被引用回数・h-indexとは?企業研究者が評価指標に振り回されない考え方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#23
→ Review論文を書くと、自分の論文が引用される意味や、外部から認知される意味も実感しやすくなります。

Review論文を書くと、自分の研究の弱さも見える

Review論文を書くと、自分の研究分野を俯瞰できるようになります。
原著論文を書いているときは、自分の実験、自分のデータ、自分の図表に意識が向きます。

しかしReview論文を書くと、視点が変わります。

この研究はどこから始まったのか。
どの論文が転換点だったのか。
なぜこのテーマは今も残っているのか。
自分の研究は、その流れのどこにあるのか。

こうしたことを考えるようになります。

そして、良いことばかりが見えるわけではありません。
自分の研究の足りない部分も見えます。次にやるべき研究も見えてきます。

これは少し痛い経験でもあります。
しかし、自分の研究の立ち位置を確認するとても良い機会になります。

Review論文を書く価値は、自分の研究を大きく見せることではありません。
自分の研究の位置づけを正しく知ることです。

Review論文でやってはいけないこと

Review論文で避けるべきこともあります。

自分の論文の宣伝にしない。
主要論文を落とさない。
古い情報だけで書かない。
文献を並べるだけにしない。
先行Reviewとの差別化を曖昧にしない。

このあたりを外すと、Review論文としての価値は下がります。

Review論文は、たくさん文献を引用すればよい論文ではありません。
分野全体を客観的に整理し、読者が次の研究課題を理解できるようにする論文です。

※関連記事:
【社会人博士/論文博士】査読コメントへの回答方法|Major Revisionで論文が強くなる理由| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#20
【社会人博士】論文がRejectされたらどうする?落ち込んだ後に再投稿へ進む考え方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#21
→ Review論文であっても、査読やRejectはあります。客観性と論理性を持って書くことが重要です。

Review論文は、第一人者への挑戦権である

Review論文を書いたからといって、第一人者になれるわけではありません。
ここは勘違いしてはいけません。
Reviewを書いた瞬間に、その分野のトップ研究者になるわけではない。そんなに甘い世界ではありません。

ただし、Review論文を書ける段階に来たということは、研究者として一つ上のステージに立ったということでもあります。

原著論文を書く段階では、自分の研究結果を示します。
Review論文を書く段階では、分野全体の流れを整理します。

これは、「自分の研究を語る」段階から、「分野全体を語る」段階への移行です。

私自身、Review論文を書いたことで、その分野を語る自信が少し生まれました。
もちろん、過信ではいけません。
自信と謙虚さの両方が必要です。

私は、Review論文を書くことを、第一人者への挑戦権を得るようなものだと感じています。
挑戦権であって、第一人者の称号ではありません。

しかし、その分野の歴史、主要論文、最新研究、未解決課題を整理し、自分の研究をその中に置く。
この作業を通じて、研究者としての視座は確実に変わります。

まとめ:まずは筆頭著者論文を積み上げ、その先でReview論文に挑戦しよう

Review論文は、論文初心者がいきなり書くものではありません。

まずは原著論文を書く。
筆頭著者論文を積み上げる。
主要論文を読む。
自分の研究テーマの流れを理解する。

その先に、Review論文があります。
自分の論文が少ないうちは、Reviewではなく原著論文を書くべきです。
しかし、ある程度の筆頭著者論文が揃ったら、Review論文に挑戦してみてほしいと思います。

Review論文は、第一人者になれる保証ではありません。
しかし、第一人者への挑戦権を得るための、重要な一歩です。

関連記事

✅ 社会人博士(論文博士)全般
■ 社会人博士取得までの全体像
社会人でも博士号は取得できる|論文ゼロから論文博士を取得した私のロードマップ| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#1

■ 研究テーマ設定〜最初の論文
【実体験】社会人博士(論文博士)は何から始める?論文ゼロから6年で博士号(論文博士)を取得した私の答え| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#2

■ 社会人博士の現実(現実的な難易度)
社会人博士に必要な研究成果とは?論文ゼロから博士号取得につなげた積み上げ方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#3

✅ 知的財産権
■ 企業研究者が絶対に考慮するべき知的財産権(特許出願)
企業研究者が学会発表・論文投稿の前に確認すべき特許出願と知的財産| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#4

✅ 学会発表について
■ 学会発表で身につく力(学会発表の本質的価値)
社会人博士(論文博士)に学会発表は必要?企業研究者が博士号取得に近づくために得られる3つの力| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#5

■ 国際学会デビュー(世界への挑戦)
社会人博士(論文博士)が初めての国際学会で学んだこと|英語力より大切な研究を伝える力| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#6

■ 国際学会でのレビューとBest Paper Award(研究者としての飛躍)
国際学会の口頭発表で評価されるには?Best Paper Awardを受賞した準備方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#7

✅ 投稿論文について
■ 最初の論文を書く方法(論文執筆の実践論)
論文を書く前にやるべきこと|社会人博士に必要なのは英語力よりストーリー設計力| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#8

✅ 博士論文について
■ 査読論文4本までの道のり(博士号取得条件を満たす)
【実体験】論文博士に必要な論文数は何本?筆頭著者4報で博士号を取得した私が伝えたいこと | 社会人博士(論文博士)ロードマップ#9

■ 博士論文のまとめ方(研究を一冊に統合する)
【社会人博士】論文博士の博士論文はどう作る?4本の査読論文を1つのストーリーにまとめた方法 | 社会人博士(論文博士)ロードマップ#10

■ 博士号の費用と本当の意義・価値
論文博士は安い?34歳で博士号を取得した私の費用と本当の価値 | 社会人博士(論文博士)ロードマップ#11

✅ 投稿論文の書き方
■ 論文の書き方(全体像)
 【社会人博士・企業研究者向け】投稿論文は何から書く?論文執筆の全体像を解説| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#12

■ 論文は図表の整理から
 論文は文章から書くな|図表と統計で研究を前に進める方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#13

■ 研究、論文執筆における統計解析の重要性
【社会人博士】論文のFigure作成で統計を避けてはいけない理由|見た目より「何が言えるか」で決まる| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#14

■ Resultsを書く際の注意点
Resultsは難しくない|論文初心者がResultsとDiscussionを混同しない書き方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#15

■ Discussionを書く時の注意点
【社会人博士】論文のDiscussionの書き方|推論しすぎずResultsから考察を組み立てる方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#16

■ Introductionの書き方
【社会人博士】Introductionの書き方|論文を読み、研究背景と目的をつなげる方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#17

■ AbstractとTitleを書くときの要点
【社会人博士】英語論文のAbstractとTitleの書き方|短くても難しい要約とタイトルの考え方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#18

■ 投稿前の注意点
【社会人博士】英語論文の投稿前チェックリスト|初投稿で見落としやすい確認項目| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#19

■ 査読コメントへの対応(Major Revision)
【社会人博士/論文博士】査読コメントへの回答方法|Major Revisionで論文が強くなる理由| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#20

■ Rejectへの対応
【社会人博士】論文がRejectされたらどうする?落ち込んだ後に再投稿へ進む考え方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#21

■ 論文執筆の頻度は?
【社会人博士】論文は年間何報書けばよいか|年1報を目標にする意味| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#22

■ IF, h-index, 被引用回数
【社会人博士】インパクトファクター・被引用回数・h-indexとは?企業研究者が評価指標に振り回されない考え方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#23

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

農学博士(論文博士)、気象予報士。

修士課程修了後、研究職への就職に失敗。
研究補助の派遣社員として研究の世界へ戻り、
異分野の企業研究所へ転職。

約6年かけて論文博士を取得。
学位取得後も研究を継続し、実績は以下。

 ✅ 原著論文15報(筆頭著者10報)
 ✅ 学術著書9報(筆頭著者8報)
 ✅ 国内外で計6件の受賞歴あり
 ✅ 国内外学会発表合計34
 ✅ 特許出願合計22件

現在は研究開発から少し離れた部署でマネジメントに従事

コメント

コメントする

目次