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論文を書く前にやるべきこと|社会人博士に必要なのは英語力よりストーリー設計力| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#8

論文を書けない理由は、本当に英語力でしょうか。

私も最初は、論文を書くうえで一番大変なのは、英語で文章を書くことだと思っていました。

もちろん、英語は簡単ではありません。
論文特有の表現もあります。
日本語で考えたことを、正確に英語で表現する難しさもあります。

しかし、初めて論文を書いた後に気づいたことがあります。

それは、英語を書く前に決めるべきことがあるということです。

論文を書く前に最初にすべきこと。
それは、研究のストーリーを決めることです。

✅ 何が分かっていて、何が分かっていないのか。
✅ 課題は何か。
✅ なぜその課題が重要なのか。
✅ どんな仮説を立て、どんな実験で検証するのか。
✅ そして、その結果から何が言えるのか。

ここが整理できていなければ、どれだけ英語表現を整えても、論文としては弱くなります。

逆に、研究のストーリーが整理できていれば、論文の骨格はかなり見えてきます

本当に必要なのは、最初から完璧な英語を書く力ではありません。
まず必要なのは、研究を論文として成立させるためのストーリー設計力です。

目次

論文を書く前に、まず決めるべきこと

論文を書くというと、多くの人はまず英文を書き始めることを想像するかもしれません。
しかし、最初にやるべきことは英文を書くことではありません。

まず考えるべきなのは、

この研究で何を明らかにしたいのか

です。

論文は、実験結果をただ並べた報告書ではありません。
読者や査読者に対して、

「この研究には意味がある」
「この結果には新規性がある」
「この課題を解決することには価値がある」

と伝えるための文章です。

そのためには、論文全体に一貫した流れが必要です。

先行研究で何が分かっているのか。
✅ まだ何が分かっていないのか。
✅ その未解決の部分は、なぜ重要なのか。
✅ だから自分たちは何を調べたのか。
✅ その結果、何が分かったのか。

この流れがなければ、データがあっても論文にはなりません。

最初に苦労したのは、英語と結果の並べ方だった

私が最初に論文を書こうとしたとき、やはり英語には苦労しました。

日本語で考えたことを英語にするだけでも大変です。
論文特有の表現もあります。
どのように書けば自然なのか。
どのように表現すれば研究内容が正確に伝わるのか。

悩むことはたくさんありました。

しかし、それと同じくらい大変だったのが、結果をどう並べるかでした。

実験データはある。
図表も作れる。
でも、それをどの順番で示せばよいのか。
どの結果を先に出し、どの結果を後に出すべきなのか。
それぞれの結果をどうつなげれば、研究の主張として成立するのか。

ここが難しかったのです。

データがあることと、論文になることは別です。

単に結果を並べただけでは、読者は理解できません。
読者が知りたいのは、「何が出たか」だけではありません。

その結果から何が言えるのか。
✅ その結果にどんな意味があるのか。
✅ その結果が、これまで分かっていなかった何を明らかにしたのか。

そこまで示して、初めて論文としての説得力が出てきます。

論文に必要なのは、データの量だけではありません。
データの意味づけです。

論文のストーリーとは何か

では、論文のストーリーとは何でしょうか。

私の感覚では、論文のストーリーとは、イントロから結論までの一貫した流れです。

特に重要なのは、次の3つです。

① 何が分かっているのか。
② 何がまだ分かっていないのか。
③ 読者や査読者に「だから何?」と思わせない説明になっているか。

論文のイントロでは、いきなり自分の研究を語るのではなく、まず背景を整理する必要があります。

この分野では何が分かっているのか。
✅ どこまで研究が進んでいるのか。
✅ 一方で、まだ解決されていない課題は何か。
✅ その課題は、なぜ解決する価値があるのか。

この整理があるからこそ、読者は「だからこの研究が必要なのか」と理解できます。

イントロは、単なる前置きではありません。
論文全体の説得力を決める重要な部分です。

ここが弱いと、どれだけ実験結果があっても、研究の意義が伝わりません。

研究は仮説と検証の繰り返しである

研究は、基本的に仮説と検証の繰り返しです。
いわゆるPDCAサイクルに近いものだと思います。

仮説を立てる。
実験計画を立てる。
どのような結果が出るかを想定する。
その結果が出たら何が言えるのかを考える。
想定と違う結果が出た場合、どう解釈できるのかも考える。

この繰り返しが研究です。

論文も同じです。

実験がすべて終わってから、初めて論文のことを考えるのでは遅い場合があります。
本来は、実験前の段階で、

「この実験は何を検証するためのものか」
「この結果が出れば、何が言えるのか」
「このデータは論文のどの図になるのか」

を考えておくべきです。

もちろん、実際の研究は想定通りには進みません。
仮説が外れることもあります。
思ったようなデータが出ないこともあります。
追加実験が必要になることもあります。

それでも、最初にストーリーを考えておくことには大きな意味があります

なぜなら、研究全体を俯瞰できるようになるからです。

自分はいま、何を明らかにしようとしているのか。
この実験は、論文全体のどこに位置づくのか。
この結果が出たとき、どのような主張につながるのか。

そこが見えているだけで、研究の進め方は大きく変わります。

実験前に、論文の骨格はかなり作れる

以前、ある先生から論文指導を受けていたときに、印象に残っている考え方があります。

それは、

結果が出たら図表を入れれば論文になるくらい、実験前に考えておくべきだ

という趣旨の話でした。

当時の私は、理屈としては分かりました。
しかし、本当の意味で腑に落ちたのは、論文を書き、研究を積み重ねた後だったと思います。

実験前であっても、論文のすべてが白紙とは限りません。

背景は整理できます。
課題も考えられます。
仮説も立てられます。
実験計画も書けます。
想定される結果も考えられます。
その結果から何が言えるのかも、ある程度は想像できます。

つまり、具体的なデータが出る前でも、論文の骨格はかなり作れるのです。

あとは実験を行い、得られた結果を図表として入れていく。
もちろん、実際には想定通りにいかないことも多いです。
結果に合わせてストーリーを修正することも必要です。

それでも、最初に論文の骨格を考えているかどうかで、研究の進め方は大きく変わります。

ストーリーがないと、データはあるのに論文にならない

ストーリーがないまま実験を進めると、よく起きる問題があります。

それは、データはあるのに論文にならないという状態です。

実験はした。
結果も出た。
図表もある。
しかし、それらをつなげても、何を主張したいのかが見えてこない。

この状態では、論文としては弱くなります。

読者や査読者から見ると、

「この研究で何が新しいのか」
「なぜこの実験が必要だったのか」
「結局、何が言えるのか」

が分からないからです。

論文は、データの倉庫ではありません。
仮説検証の物語です。

だからこそ、データを集める前に、研究のストーリーを考えることが重要なのです。

企業研究者が論文を書くときに難しいこと

企業研究者が論文を書く場合、大学の研究者とは違う難しさもあります。

まず、開示できる情報とできない情報の線引きがあります。
会社の研究成果には、知的財産やノウハウが関わることがあります。
すべてを論文に書けるわけではありません。

また、研究テーマが会社都合になりやすいという面もあります。

企業研究は、会社の事業や利益につながることが重視されます。
一方で、論文にするためには、学術的な意義も必要です。

つまり
企業研究者は、会社にとって意味のある研究を、サイエンスとしても意味のある形に整理する必要があります。

ここが難しいところです。

さらに、時間も限られています。
日々の業務、会議、報告、社内調整の中で、論文だけに集中することは簡単ではありません。

だからこそ、社会人博士や企業研究者にとって、最初に研究のストーリーを整理することは重要です。
行き当たりばったりで実験を進める余裕は、あまりないからです。

社会人博士こそ、ストーリー設計力が必要である

社会人博士にとって、論文ストーリー設計力は特に重要です。

理由は2つあります。

1つ目は、博士論文全体の構成につながるからです。

博士号取得では、個々の論文だけでなく、それらをまとめた博士論文全体の流れも必要になります。
1本1本の論文で、背景、課題、仮説、結果、考察を整理する力は、最終的に博士論文を書く力にもつながります。

2つ目は、研究者としての思考力そのものだからです。

論文を書く力とは、単に英語を書く力ではありません。
研究を設計し、意味づけし、他者に伝える力です。

何が分かっていて、何が分かっていないのか。
何を明らかにする必要があるのか。
どのような実験で検証するのか。
その結果から何が言えるのか。

この思考ができるようになることが、研究者として成長するうえで非常に重要です。

論文を書く前のチェックリスト

論文を書き始める前に、まず次の項目を整理してみるとよいと思います。

これらを日本語で説明できない状態で、いきなり英語論文を書こうとすると苦しくなります。

逆に、ここを整理できていれば、英語表現は後から整えることができます。

まずは、自分の研究について、

分かっていること/分かっていないこと/明らかにしたいこと
を3行で書いてみる。

それだけでも、論文への第一歩になると思います。

FAQ

Q. 論文を書く前に最初にやるべきことは何ですか?

最初にやるべきことは、英文を書き始めることではなく、研究のストーリーを整理することです。
何が分かっていて、何が分かっていないのか。どんな課題があり、何を明らかにするのか。ここを整理することが、論文を書く第一歩になります。

Q. 英語が苦手でも論文は書けますか?

英語力は必要ですが、最初から完璧である必要はありません。
むしろ、英語以前に研究の流れが整理できていることの方が重要です。研究のストーリーが明確であれば、英語表現は指導教員、共著者、英文校正などの力を借りながら改善できます。

Q. 企業研究でも論文にできますか?

企業研究でも論文にできる可能性はあります。
ただし、開示できる情報とできない情報の線引き、知的財産、社内承認、学術的意義の整理が必要です。会社にとって意味のある研究を、サイエンスとしても意味のある形に整理できるかが重要になります。

まとめ|論文は英語を書く前に決まっている

論文を書く前に最初にすべきことは、英文を書き始めることではありません。

まず、研究のストーリーを決めることです。

何が分かっているのか。
何が分かっていないのか。
課題は何か。
なぜその課題が重要なのか。
どんな仮説を立てるのか。
どんな実験で検証するのか。
結果から何が言えるのか。

ここを整理することが、論文を書く第一歩です。

論文は、英語を書く前に決まっています。
そして、論文を書く力とは、研究を設計する力です。

英語に不安がある人ほど、いきなり英文を書こうとしなくてよいと思います。
まずは日本語で、自分の研究のストーリーを整理する。

それが、社会人博士として論文を書くための、最初の一歩になるはずです。

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社会人博士を目指す全体像を知りたい方は、まず 社会人でも博士号は取得できる|論文ゼロから論文博士を取得した私のロードマップ【社会人博士ロードマップ #1】 を読んでみてください。

論文や学会発表をどのように積み上げていくかは、【実体験】社会人博士(論文博士)は何から始める?論文ゼロから6年で博士号(論文博士)を取得した私の答え【社会人博士ロードマップ #2】 で詳しく書いています。

企業研究を学術成果としてまとめる難しさについては、社会人博士に必要な研究成果とは?論文ゼロから博士号取得につなげた積み上げ方【社会人博士ロードマップ#3】 が参考になると思います。

初めての国際学会での失敗や英語質疑応答の苦労については、社会人博士(論文博士)が初めての国際学会で学んだこと|英語力より大切な研究を伝える力【社会人博士(論文博士)ロードマップ#6】 にまとめています。


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この記事を書いた人

農学博士(論文博士)、気象予報士。

修士課程修了後、研究職への就職に失敗。
研究補助の派遣社員として研究の世界へ戻り、
異分野の企業研究所へ転職。

約6年かけて論文博士を取得。
学位取得後も研究を継続し、実績は以下。

 ✅ 原著論文15報(筆頭著者10報)
 ✅ 学術著書9報(筆頭著者8報)
 ✅ 国内外で計6件の受賞歴あり
 ✅ 国内外学会発表合計34
 ✅ 特許出願合計22件

現在は研究開発から少し離れた部署でマネジメントに従事

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