Introductionを書こうとして、手が止まる。
論文を書いたことがある人なら、一度は経験するのではないでしょうか。
研究背景は何となく書ける。
関連論文もいくつか引用できる。
けれど、そこから自分の研究目的につながらない。
気づけば、先行研究を順番に紹介しているだけの文章になっている。
「Aらはこう報告した」
「Bらはこう示した」
「Cらはこう述べた」
たしかに間違ってはいない。
でも、自分で読み返すとこう思うのです。
「で、結局この研究は何がしたいのか?」
私も最初は、Introductionで先行研究を並べただけになったり、背景説明が長くなりすぎたりしました。
丁寧に書いているつもりなのに、研究目的までなかなか到達しない。
これは論文初心者にはよくある失敗だと思います。
Introductionに必要なのは、きれいな文章だけではありません。
自分の研究が、世界の研究の中でどこに位置するのかを理解することです。
この記事では、社会人博士や論文初心者に向けて、Introductionの書き方、関連論文の読み方、研究背景と研究目的をつなげる考え方を解説します。
※論文を書く順番、図表、統計、Discussionについては以下の記事を参照してください。
【社会人博士・企業研究者向け】投稿論文は何から書く?論文執筆の全体像を解説| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#12
論文は文章から書くな|図表と統計で研究を前に進める方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#13
【社会人博士】論文のFigure作成で統計を避けてはいけない理由|見た目より「何が言えるか」で決まる| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#14
Resultsは難しくない|論文初心者がResultsとDiscussionを混同しない書き方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#15
Introductionは文章力だけでは書けない
結論から言うと、Introductionは文章力だけで書くものではありません。
もちろん、わかりやすい文章を書く力は必要です。
しかし、それ以上に大事なのは、
研究背景、先行研究、未解明点、自分の研究目的の関係が整理できていることです。
Introductionは、文献紹介の場所ではありません。
読者を研究目的まで連れていく場所です。
そのためには、次の流れが必要です。
研究背景。
先行研究でわかっていること。
まだわかっていないこと。
だから自分は何を明らかにするのか。
この流れがつながって初めて、Introductionになります。
逆に言えば、この流れが見えていない状態で書き始めても、途中で迷子になります。
研究背景という森に入り、先行研究という木を一本ずつ眺めているうちに、出口がわからなくなる感じです。
研究の基本は、論文を読むこと
研究の基本は、論文を読むことです。
これは当たり前のようで、忙しい社会人博士にとっては簡単ではありません。
それでも、論文を読まないまま研究を進めるのは、地図なしで山を登るようなものです。
研究は、自分ひとりで完結する作業ではありません。
ある意味で世界中の研究者との共同作業です。
一方で、激しい競争でもあります。
これを知らなければ、自分の研究の立ち位置はわかりません。
Introductionを書くとは、自分の研究を世界の研究地図の中に置くことです。
だからこそ、関連論文を読むことが重要になります。
論文は「読む時間」を待っていても読めない
社会人博士に、まとまった研究時間はなかなかありません。
だから私は、論文を読む時間を日常の中に入れていました。
そういう時間に、関連論文を読んでいました。
もちろん、毎回じっくり読めたわけではありません。
電車の中で細かい方法論まで追うのは難しいですし、出張帰りの移動中は疲れて頭に入らないこともあります。
そういうときは、まずAbstractだけ読む。
関係が薄そうなら、サラッと読むだけでよい。
逆に、自分の研究に近いと感じた論文は、後でしっかり読み直す。
論文は量も質も重要です。
ただし、すべての論文を同じ深さで読む必要はありません。
重要な論文を見つけるためには、ある程度の量を読む必要があります。
一方で、本当に重要な論文は深く読む必要があります。
この見極めの入口として、私はまずAbstractを見ていました。
関連論文は星1〜5で重要度をつけていた
関連論文は、ただ集めればよいわけではありません。
PDFを大量に保存して満足しても、それは研究ではなく、論文コレクションです。
ファイル数だけ増えて、頭の中はあまり整理されていない。
これは危険です。
私は関連論文をExcelで一覧化し、自分の研究から見て重要か、関連が深いかを星1〜5で評価していました。
厳密なルールというより、自分の研究との距離感を見えるようにするための整理です。
判断基準は、たとえば次のようなものです。
自分の研究テーマに近いか。
扱っている現象やメカニズムが近いか。
Introductionで引用できそうか。
Discussionで使えそうか。
その分野でよく引用されているか。
大事なのは、
「この論文は将来、自分が論文を書くときに使えるか」
という視点で読むことです。
ただ読むのではなく、将来自分でIntroductionを書くことをイメージしながら読む。
これが積み重なると、論文を読むことが、自分の研究の引き出しを増やす作業になります。
Introductionは先行研究を並べる場所ではない
Introductionで大切なのは、関連論文をただ並べないことです。
先行研究は、研究目的へ向かうための材料です。
何がわかっているのか。
何がまだわかっていないのか。
なぜ自分の研究が必要なのか。
この流れを作るために、先行研究を使います。
関連論文を読んでいないと、研究背景は浅くなります。
未解明点も書けません。
結果として、自分の研究目的も弱くなります。
逆に、関連論文を読み、自分の研究との関係を整理しておくと、Introductionは書きやすくなります。
「あの論文ではここまで示されている」
「でも、この条件ではまだわかっていない」
「だから自分の研究ではここを明らかにする」
この流れが見えてくるからです。
Introductionは、読者に「なるほど、だからこの研究が必要なのか」と思ってもらうための場所です。
ResultsとDiscussionを書いた後にIntroductionは整いやすくなる
Introductionは、最初に完璧に書こうとしなくてよいと思います。
ある程度研究テーマが決まると、実験と考察を繰り返します。その間に論文を読みます。読みまくります。
自分の結果が出てくると、さらに読むべき論文が見えてきます。
もちろん、最初から自然に書けるわけではありません。
私も最初は、Introductionを最初に完成させようとして苦しくなっていました。
でも、ResultsとDiscussionが固まってくると、
「この背景は必要だ」
「この先行研究は入れるべきだ」
「この話は広げすぎだ」
と判断しやすくなります。
つまり、Introductionは論文全体から逆算して整えるものでもあります。
※ResultsとDiscussionの違いについては、
Resultsは難しくない|論文初心者がResultsとDiscussionを混同しない書き方| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#15
を参照してください。
※Discussionの書き方については、
【社会人博士】論文のDiscussionの書き方|推論しすぎずResultsから考察を組み立てる方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#16
をご覧ください。
※Figureから論文を組み立てる流れは、
【社会人博士】論文のFigure作成で統計を避けてはいけない理由|見た目より「何が言えるか」で決まる| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#14
論文は文章から書くな|図表と統計で研究を前に進める方法| 社会人博士(論文博士)ロードマップ#13
に詳しい記事があります。
社会人博士が今日からやるべきこと
Introductionを書けるようになるために、今日からやるべきことはシンプルです。
✅ 関連論文を読む。
✅ まずAbstractを確認する。
✅ 読んだ論文を一覧化する。
✅ 自分の研究との関係で重要度をつける。
✅ Introductionで使えそうか、Discussionで使えそうかを考える。
✅ 隙間時間に読む論文を準備しておく。
これだけです。
ただし、簡単ではありません。
読むだけでも大変ですが、全ての論文を精読する必要はありません。
取捨選択することも大切なスキルです。
論文を読む量が増え、自分の研究との関係で整理できるようになると、Introductionは変わります。
先行研究を並べるだけの文章から、研究背景、未解明点、研究目的がつながる文章になります。
まとめ
Introductionは、文章力だけで書くものではありません。
研究背景を書くには、関連論文を読む必要があります。
未解明点を書くにも、関連論文を読む必要があります。
研究目的を明確にするにも、世界の研究状況を理解する必要があります。
社会人博士は時間が限られています。
だからこそ、実験の隙間時間、通勤途中、出張時の移動中、家で少し暇なときに、読む論文を準備しておく。
そして、読んだ論文を自分の研究との関係で整理する。
重要度をつける。
将来自分で論文を書くことをイメージしながら読む。
研究の立ち位置が見えれば、Introductionは書きやすくなります。
Introductionを書く力は、論文を読む力から始まります。
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